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Ryuto side
それからしばらくして彼女のポニーテールが少し揺れた
電車が止まり、駅についたんだ
彼女はこの駅で降りるのか足元に置いていたスクールバッグを持ち上げようとしていた
電車の扉が開いてたくさんの人が降りようとしていて、彼女も人波に押されるようにして降りたけれども…
彼女のスクールバッグについていた濃紫のお守りが電車の戸袋に挟まってしまっていた
あたふたする彼女
戸袋に手を突っ込むことなんてできないし
そんな彼女を目の当たりにして何もできない俺もあたふたしていた時
彼女が思いっきりスクールバッグを引っ張った
プチッ
お守りのヒモが切れた
そしてそのタイミングで電車のドアが閉まった
扉が閉まるのと同時に戸袋から出てきたお守りをキャッチしたした俺に向かって
彼女は
「持ってて」
そう言った
そんな昔の夏のちょっとした出来事
それなのに
“頑張っている”ってことをどこかでちゃんと見てくれている人がいることが嬉しかった
そして
“頑張ることのできる”自分に少し自信が持てたんだ
だから
あの時の彼女も今の俺を見てくれたりしているといいな…そう思う時がある
でも
名前どころか
何もかも知らない
塩素の匂いと
ポニーテールと
アイスココアと
濃紫のお守り
これしか
彼女のことは知らない
そんなことを夢で思い出してたからか
「待って」
夢の中で彼女を呼び止めていた
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作者名：ポップコーン | 作成日時：2019年1月27日 16時
