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Ryuto side
「ヘラヘラなんかしてない
俺は先生の頑張り、知ってますよ」
自分の口から出てきた言葉は
自分の言葉じゃないんじゃないかってくらいに真っすぐで自分でも驚いた
とにかくまっすぐな“先生”に毒されている？いいや、影響されてしまっているような…
中1の時に出会ったあの名前も知らないあの女の子が
俺の小さな“頑張り”を見てくれたことが嬉しかったから
だから俺も、この人の“頑張り”ちゃんと見ているよって伝えたかったのかな
…なんて照れくささからか分析してみる
でもさ
テストの出題方法は分析すれば分かるのに
なんで俺が今こんな気持ちになっているのか
なんで俺がこんな言葉を発しているのか
分かんなくて
だけど
「ありがとう」
って先生がまた笑ってくれるからさ
もうどうでもよくなっちゃって
ちょっと
心がむずがゆいけれど
うつむきながらあいまいに頷いた
「あ、じゃあお礼に」
そうさっき自販機に慰めてもらおうとしていた人とは思えないくらいに元気になった先生は
そう言ってアイスココアのボタンを押して俺に手渡した
「あ、ありがとうございます…」
そう言って先生からアイスココアを受け取る
偶然だけれど
単なるタイミングかもしれないけれど
止まっていた時間の針が動き出したように思えた
応接間に戻った後も
先生はなんだか心の靄が晴れたように元気そうなんだけれど
俺は先生の頬杖をついて書類とにらめっこしている姿だったり
体をよじってストレッチをしている姿を横目で見たり
気落ちがせわしなくて
なかなか課題は進まない
ルーズリーフの隅を切って小さな鶴を作ってしまっているくらいにね
…そして迎えた夕陽の差し込む下校時刻
「んじゃ、また明日の朝、課題の続きに来ていいですか？」
スクールバッグに課題をしまい込みながら先生に言う
返答がなくて先生の方を向くと
先生は教材を探しているのか書類にむかって険し顔をしていた
あぁ
夕陽が頑張る先生の横顔を照らして綺麗だなって
でも
そんなこと言えるわけなくて
そんなこと言えるほどの距離感ではないことくらいは理解できるオトナで
でも
いつかの放課後のように
机の隅にさっきルーズリーフの隅で作っていた小さな鶴を置いて
自己主張したくなるくらいには
ちょっとまだコドモで…
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作者名：ポップコーン | 作成日時：2019年1月27日 16時
