さよなら、ただいま。（SK）

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ふと目が覚めたら、すごくいい気持ちだった。
明るくて、あったかい光。懐かしくて、優しくて、包み込まれるような。


服がちっとも濡れていなくて、どこも苦しくなく、身体が軽い。


あ、しんじゃったのかも。私。
って思った。


あっねこ、って思って周りを見たら、赤い髪の男の人があのねこをだっこして立ってた。
よかった、ねこ生きてる。ふわふわした金色の毛が光に透けて綺麗。そうか、金色の毛色だったのね。暗かったから白っぽいってしかわからなかったけど。
茶色の透き通ったビー玉みたいな瞳。

ねこをだっこしてる男の人は黒いスーツで、優しそうな目にかかる長い前髪が揺れてる。
がっちりした胸板。
ねこを抱く手にはゴツいブレスレットや太い指輪。



かっこいいなぁって、思わずじーっと見る。
前髪の隙間から眉毛がチラリ。
困ったみたいに驚いた顔。
ぷっくりした赤い唇がゆっくり動く。


「……ねえ」


しゃべった！


「いや、しゃべった！じゃないよ。ちょっと、あんた何やってんの」

……何やってんのって……え？

「そういう予定じゃない人だよね？担当者と一緒じゃないもんね？」
「担当者……？」
「なに？自分でこっち来ちゃったの？なんで？あ！人間だからか！」

ってことはやっぱりしんでるの？私。ここ天国なの？ていうか来ようとして来てないよ私。

「いや猫ちゃんを……」
「この子は予定だから大丈夫だよ？もう来年また生まれなきゃなんだから。忙しいの」

予定…？

「あーそうだった人間だった。人間は忘れちゃうんだった」




話が一向に噛み合わないのに、たまに私が声に出す前の言葉まで伝わっている不思議。


「やべ、遅れる。じゃ、いこーかぁ。ねぇー」

あまい声で、子どもに言うみたいにだっこしたねこに話しかけながら、赤髪の男の人は光の中に消えて行った。

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