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手越さんが静かに言う。
「この先輩と出会うのも決めてたよ、Aちゃん」
「え!」
「櫻井さんとはもうずーっと一緒の予定だったんだよ。Aちゃんが一番の弟子だもん。スーパーエリート櫻井さんが出世するたびに一緒に引っ張り上げられる」
「は?」
「ちなみに前世ではね、Aちゃんのお兄ちゃんだったよ。櫻井さん」
「え!櫻井先輩と前世でも出会ってたの!」
「今世でかかわりのある人はだいたいそうだよ。ホラ、Aちゃんの今の彼氏も、前前前世から毎回恋人じゃん?」
「嘘……」
「嘘じゃないよ。毎回よく見つけるよね、お互いに」
あははって笑う手越さんを見上げたら、いつの間にか近所の川にかかる橋の上にいた。
あたりは真っ暗。
私が溺れて流された場所のはずなのに、懐かしくて、あったかい気持ちになる。
「なんか、ここにいると、なんだかすっごくいい気持ち」
「そう。みんながお花供えてくれてるからね。Aちゃんのために」
手越さんが指差す先を見ると、私が川に入る前に靴を脱いだところらへんに、たくさんお花が供えてある。お菓子や飲み物もいっぱい。
誰かがしゃがんで手を合わせているのが暗がりに見える。
想いは、祈りは、ちゃんと届くんだ。
優しいお花と私の心に寄り添うみたいな祈りに、あたたかい気持ちになる。
しゃがんで手を合わせていた人がすうっと立つ。そのシルエットが懐かしくて目を凝らす。
「………シゲ」
シゲが立ったまま、しばらく川を見つめてる。
「……A?」
名前を呼ばれてびっくりする。
聞こえたの?
でも川に向かって言ってるように見えるんだけど。
複雑な気持ちで横顔を見つめる。
しばらく前から会ってなかったし連絡もとれなかったじゃない。
私のことなんかどうでもよさそうだったじゃない。すきな期間はとっくに過ぎてたじゃない。
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ゆっちゃん - もうスッゴい感動です!いつの間にか涙腺崩壊してました(;つД`)またこのような作品が読みたいです! (2018年4月27日 0時) (レス) id: 690f139b43 (このIDを非表示/違反報告)
LOVE - 超感動で泣いてしまいました。マジ感動作。今回みたいな感動作また作ってください! (2017年3月31日 0時) (レス) id: 3e63f40173 (このIDを非表示/違反報告)
chi(プロフ) - 泣きました。そして話の中でのことすごく分かります。友だちに話の内容的なことを言われたばかりでした。すごい!と驚きました。 (2017年2月20日 0時) (レス) id: f8c9543924 (このIDを非表示/違反報告)
有咲(プロフ) - 初めまして。もう、毎回じぇにーさんにはキュンキュンさせてもらっているか、涙腺崩壊させてもらってます。遠回しな恋物語、なかなかくっつけさせない感じ大好きです♪これからも、頑張ってください!! (2017年1月8日 16時) (レス) id: fd3021356a (このIDを非表示/違反報告)
杏離サマ/@ラ(プロフ) - はじめまして。すっごい感動していつの間にかぼろぼろ泣いてました。次の作品も楽しみにしてます! (2016年12月18日 10時) (レス) id: bb5adfcd27 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:◯じぇにー◯ | 作成日時:2016年12月8日 23時