なんでもない話 ページ25
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木が影になり陽の光が入らず、少し肌寒い川沿いを彼と並んでのんびり歩く。
こんな " なんでもない時間 " を彼と過ごすことができているのが少し信じられなくて、でも幸せだ。
TH「 Aさんは、ずっと……ここにすんでいる?……うまれたばしょは、ちがう? 」
『 地元は全然違うところだよ。
……秋田、ってわかる? 』
TH「 あきた、? 」
『 うん、日本の北の方。 』
テヒョンさんは " うーん " と首を傾げる。
秋田には有名な場所や食べ物なんてなんにもないし、きっと知らないだろう。
大阪や福岡みたいにドームがあるわけじゃないし、お好み焼きや博多ラーメンみたいにパッとする食べ物があるわけでもない。
『 ……すっごく田舎だから、わかんないとおもう 』
TH「 いなか……あきた。
………きっと、すてきなところ 」
じっくり考えた後にそう言ったテヒョンさん。
マスクであんまり表情はわかんないけど、綺麗な目は真剣に、でも優しくこちらを見つめている。
『 …うん、いいところだよ 』
私は秋田のなんにもないのどかな町で生まれ育った。
地元は好きだったけれど、" 選択肢が広がりそうだから " とありがちな理由で上京することを選びこっちの大学に進学した。
今じゃ地元に帰るのは正月ぐらいで、親や地元の友達とはあんまり連絡を取っていない。
だからか何となく引け目、というか、後ろめたさみたいなものがあって。
TH「 Aさんの、あきたの、すきなところ、おしえて 」
『 好きなところ?そうだなあ……
秋田は海も山もあってすっごく景色が綺麗なの。
あとね、人がみんなやさしくて方言がちょっと…おもしろいの。
お祭りも楽しいし、ご飯もおいしいのがたくさんあるよ!
稲庭うどんとか、きりたんぽとか、いぶりがっことか…… 』
スラスラ出てくる言葉にハッとしてテヒョンさんを見ると、こっちを見てにこにこと笑っていて。
TH「 あきた、だいすきなんだね 」
そう言われた時、なんだか急に恥ずかしくなって
でも同時に、自分の中にあった地元への " 後ろめたさ " 引いていくような感じもして。
『 ……だいすきだよ、秋田。 』
テヒョンさんはまた満足気ににこにこと笑う。
彼はいつも、思いがけず私の心をこうして溶かしてくれる。
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まこ(プロフ) - ゆーみさん» 不定期で申し訳ないです( ; ; )続編でもよろしくお願いします! (2021年5月5日 3時) (レス) id: 7510ce0228 (このIDを非表示/違反報告)
まこ(プロフ) - 杏奈さん» ありがとうございます!!( ; ; )今後もぜひ見守ってください!( ; ; ) (2021年5月5日 3時) (レス) id: 7510ce0228 (このIDを非表示/違反報告)
まこ(プロフ) - riyaさん» わ〜〜いつもありがとうございます( ; ; )続編でもよろしくお願いします! (2021年5月5日 3時) (レス) id: 7510ce0228 (このIDを非表示/違反報告)
まこ(プロフ) - チヒロさん» ありがとうございます( ; ; )すっごく嬉しいです……!ご期待に沿えるよう努力します! (2021年5月5日 3時) (レス) id: 7510ce0228 (このIDを非表示/違反報告)
ゆーみ(プロフ) - 更新楽しみにしています!! (2021年4月27日 9時) (レス) id: 7ed0007cba (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まこ | 作成日時:2021年1月16日 19時