Crystal _ 虹彩の彼方 ＿

次の出会い ページ10

それから
ミキが満足気な顔で

"あ!そうだ！私の仲間に梨香が好きそうなヤツいたわ!"

そう言ったのは
それから何週間かが過ぎた頃_

"好きそうなヤツ"って響きに
あれ?これ、ヤバいヤツ? …そう思ったのと

ミキがピコピコやってた携帯に "送信♡"
そう嬉しそうな声で言ったのは

ほぼ｡おんなじタイミングで

だから私は慌ててミキの腕をぐっと引いてから

「私、まだ恋なんかするつもりないんだけどｯ⁉」って小声でそう訴えた

だって
まだ恋なんか出来る気が全然しないんだもん…

心の中は、まだ山下さんの事でいっぱいで
まだ、忘れられてさえいないんだもん…

こんな私に"新しい恋"なんか絶対無理‼

でも
そんな私にミキは

『梨香はホント恋愛不器用だね〜』そう言って

"忘れられてないから" こそ "忘れるために" 会うんでしょ？" そうサラリと言った

え?…忘れるために会う…？

そんなのって"アリ"なのｯ…?!

それは今まで1度だって考えたコトなかった考え方で

軽く衝撃を受けちゃってる私に

ミキはまた小悪魔みたいな笑顔を浮かべてから

『…それともアンタは叶わない恋に時間を費やすつもり?…で、そのまま年だけ取っていくの?時間のムダでしょそんなの』 って云った

……確かに

このまま山下さんの事を想い続けるのは
ミキが言うみたいに "ムダ" なのかも知れない

だって山下さんは彼女さんと
きっともうヨリを戻してるハズだし

私が想い続けていたって
山下さんにはきっと何も伝えられないもん…



『どうする?明日ちょっとなら時間取れるっぽいけど?』_

もう送信済のくせに
きっと段取りだって勝手に決めちゃってるくせに

どーするー？なんて
意地悪に問いかけてくるミキの瞳

…忘れられるなら…

こんな
いつまでも苦しいだけの想いを忘れられるなら

いっそ会ってみてもいいのかも知れない…

会ったって全部を忘れられる自信なんかないけど

痛みだって
切なさだって
何処かで残っちゃうかも知れないけど

それでも少しでも可能性があるのなら

もう
こんな苦しいだけの想いは忘れたい…

水曜日が来るたび
胸がぎゅんと寂しくなる気持ちは忘れちゃいたい…

「…失礼じゃないかな…?」

だって多分私は

山下さんのにっかりした笑顔も
クセのある声も特徴的な笑い声もきっと忘れられなくて

きっと
誰といても"比べちゃう"から

けど

そんな私にミキは

"まぁ逢ってみなって!"
そう自慢アリです！って笑顔で笑ってた

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