Crystal _ 虹彩の彼方 ＿

あまりにも ページ20

あまりにも不意に…

あまりにも突然.現れるから…

『なっ‼なんで泣いてんねんｯ‼』

瞳の中で山下さんがぐにゃりと涙で滲んで

そして
なんにも用意してなかったハズなのに

「全部山下さんのせいですよ…」
そんな言葉が準備も覚悟もないままに溢れ出す

溢れ出してしまえばもう留まることなんか忘れて

"彼女さんいるの解ってるのに" …って
"彼女さんいい人って解ってるのに"…って

"それでも好きなんです" …って

今まで抑え続けてた気持ちが
抑制から逃げ溢れるようにして零れてきてしまう

"突然の告白"

困らせてるの…解ってる
呆れさせてるのも…解ってる

でも…
どうしても止められない想いは

「私、山下さんが好きです！」＿

そんな素直な言葉を紡いで
それからようやくにして止まってくれた


『……え？』

それはとてもとても短い山下さんの反応

そりゃそうだ

私も何度かは経験した事があるから解るけど

"なんとも想ってない人"…

"仲間" とか "友達" としか想ってない人から突然 "好きなんです" なんて想いを伝えられたって

『え？』…って戸惑って
きっとそれから後はお互いの距離がぎこちなくなってしまうだけ

想いを伝えられた分
どう接したらいいのか解らなくなって

少しずつ
友達…でさえ居られなくなってしまうだけ

そんなコト解ってるのに…

山下さんがあまりにも急に現れるから

打ち明けてしまいたくなるタイミングで現れるから…

…止められなかったじゃんか……


『梨香ちゃん…今の何？』

少しだけ青ざめたような
それでいて困ったような山下さんの顔は

瞳の奥の方で
私が言った言葉達を聞かなかったことにしようとするから…

だから私は
"どうせぎこちなくなるんなら"…って

"もうどうにでもなってしまえ!"…って

そんな妙なスイッチが入ってしまって

「…亜嵐と出逢ったのだって山下さんの事忘れるためで…でも亜嵐の事、最後まで傷付けて…何も気付いてあげられなくて…」

_そんぐらい山下さんでいっぱいなんです ＿
…そう叫んでた

そんな言葉は
私と山下さんの繋がりを切ってしまう気がしたけど

でも

亜嵐を傷付けてしまった分
亜嵐が私の想いを汲んでくれた分

もう逃げずに素直にならなきゃ…って
そんな気もした

今の私と山下さんの距離は手と手が届く距離

だけどきっとそれもそのうち "終わる"

でも

私はこんな状況さえ

"仕方なかったんだよな" …なんて

いつもみたいに
…割り切るようにして思っていたんだ…

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