REAL _最初で最後の恋_

初めての喧嘩 ページ8

ケンカなんか
する事もなかったし

正直言ってしまえば "する時間" すら存在しなかった

健ちゃんには毎日のようにトレーニングがあったし

それに "三代目" そんな名前の夢が目の前に迫ってきていたから…


ケンカの発端は言ってしまえば私の寂しさから


それは久しぶりに2人で過ごしたリビングで…。


『いつも一人ぼっちにしといてゴメンな？』


健ちゃんはそう言って朝からずっと私の傍にいてくれた

それが健ちゃんに言える最大限の言葉だって事は多分わかってた


それでも健ちゃんが欠乏しまくってる私はその言葉は針のように心をチクチクと突っついた

優しさ…が嬉しくなかった

ううん。

優しさをちゃんと優しさとして捉えきれなかった


だから私は

「本当だよ…なんのために私ここに居るのか分かんなくなっちゃったよ…」

そんな言葉を平気でぶつけた


なんのために同じ部屋に居るの？
私がここに住んでる必要って本当にあるの？

…私なんかいなくても変わらないんじゃないの？



見事なまでのぶつけ方…だったと思う

健ちゃんはなんにも言わず

ううん。なんにも "言えず"

ただただ寂しそうな顔をして私を見てた


それが私には哀しくて

健ちゃんが何も言わないのと
健ちゃんにそんな顔をさせてるのと

止まらないくらいの寂しさと
どうにもこうにもわがままな自分が哀しくて


悲しいよ…、
寂しいんだよ

傍に居てよ…

そう言えない代わりに

「私なんかいらないじゃん」

…出てきた言葉はそんな風な尖った言葉だった



寂しいんだよ…って

悲しいんだよ…って、

傍に居てよ…って素直に言えない分苦しくて


それでも健ちゃんの寂しそうな顔を見てられなくて気が付いたら私は部屋を飛び出してた

…握ってた鍵を健ちゃんにバシって叩きつけて……




私から好きになったハズなのに

好きでいてくれたらそれで良かったハズなのに

いつの間にか欲張りになってた心は
行き場を失ったみたいにして駆け出してた


それでも駆け出しながら

健ちゃん
健ちゃん
健ちゃん…って

やっぱり健ちゃんの事が好きだった



健ちゃんが追う夢が叶うことを喜べない自分が居ることに気が付いてしまってた


健ちゃんの事をみんなに見られたくない自分が居ることに気が付いてしまってた


だからそんな自分が自分で許せなかった


三代目


それは健ちゃんが追う夢

私の中でいちばんキライな響きに変わってた

ゴメン→←LDH

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