三代目と落ちる音 ページ12
_頭冷やしてくる_
そう出て行った健二郎は
その夜。部屋には帰ってこなかった
だから私は
半分の寂しさと
ほんの少しの安心を感じていた
どんな顔を向けたらいいのか解らなかったし
なんて声を掛けたらいいのかすら解らなかった
……もう終わりなのかな……
見え隠れする想いはそんな彩りだけを私に向けて
私はイヤイヤってそれを抵抗しながらも
抵抗の虚しさを感じ始めていた
…もう終わりなのかもしれない……
素直にそう思ってみたらそれしか見えなくなってしまって
私は健二郎のテーブルの上にある1枚の書類を戸惑いながら持ち上げた
三代目デビューの日取り
メンバーは誰々
そしてその羅列の中に存在する
"山下健二郎" …そんな名前
それは健二郎の夢の実現
本当はとてもとても喜ばしいコト…
…本当は誰よりも今は私がお祝いすべきコト…
だけど18歳と少し。
そんな若さの私は頭と心のバランスがシーソーみたいにコチラにアチラにと揺れていて
ただただ
私が知っている健二郎が
私が知らない健二郎になってしまう気がして
…書類と一緒に
コトリ……。
音を立てたのは私がテーブルに置いた指輪の音
健二郎が雑貨屋で買ってくれた指輪を置いた音
それからガチャリ
これは私が健二郎の部屋を出た音…、、
持っていきたいものなんて何にもなかった
持っていかなきゃ行けないものも何もなかった
…ここは置いておきたいもの
それだけが存在する小さな部屋……。
『いつか広い部屋で梨香が好きなネコ飼うて暮らそうな?』
時々眠る前、健二郎が言ってくれた小さな夢
私は健二郎のそんな顔を見ながら何度だってうんうん…って頷いた
同じ夢を描いてる…
…そんな気でいたから……
でも。
だけど。
部屋なんか広くなくて全然よかった…
部屋なんかこの部屋のままで全然よかった…
こんなに遠くなってしまうくらいなら
2人で居られなくなってしまうくらいなら
部屋なんか……狭いままがよかった……
でも
もう
健二郎は普通の人には
あの頃の "向日葵みたいなお兄ちゃん" には
…戻れない.そんな線に立っている人……
あと一歩でも向こうに行ってしまえば私なんか
手が届かない人になってしまう
知っている健二郎と
知らない健二郎
そんなギリギリのボーダーライン
私にはそれが怖くてそれがツラくて
2人で暮らした部屋をそっと出た18歳…。
私は生まれて初めて本気で失恋の痛みを知った
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梨香(プロフ) - にゃりんさん» あと。楽しんでくれて本当にありがとう…この作品は私にとってSpecialなので褒めてもらえるとホッとするよ (2019年8月28日 18時) (レス) id: 64c500100f (このIDを非表示/違反報告)
梨香(プロフ) - にゃりんさん» いひひ。最後はどーなるのかなぁ(笑)…女の子が夢中で健二郎を好きなコトと情景がいい塩梅に描けてたら嬉しいな…☆ (2019年8月28日 17時) (レス) id: 64c500100f (このIDを非表示/違反報告)
にゃりん(プロフ) - 梨香さん» なんかね、恋愛に純粋だった頃を思い出すね。にゃりんぐらいおばちゃまになってから読むと心が洗われるね(笑) 日記っぽく書いてるから余計かな〜。終わりは日記調じゃない方がよりリアルかも! なーんて偉そうに言ってみたけど、つまりは楽しく読んでます(爆) (2019年8月28日 17時) (レス) id: 71dba2f90e (このIDを非表示/違反報告)
梨香(プロフ) - にゃりんさん» にゃーちゃんだからこそ聴きたい!この作品どんな? (2019年8月28日 12時) (レス) id: 64c500100f (このIDを非表示/違反報告)
にゃりん(プロフ) - 梨香さん» なるほどね〜♪等身大のお話だからリアルなんだね!!それを踏まえてもう一度読みなおそーっと(笑) (2019年8月28日 12時) (レス) id: 71dba2f90e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:梨香 | 作成日時:2019年8月27日 11時