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可愛げのない女と
ビジネスとして私を教えなきゃいけない隆二との車内はいつだって空気が重かった
『そこ右に曲がってください』
そんな隆二に反抗するためにわざとウィンカーを出し忘れてみたり
『その線でストップしてください』
そう言われたら線を越してからブレーキ踏んだり
…でも
内心はいつだってドキドキで心臓は壊れそうだった
隣のシートに座る隆二の気配が
少しでも動いたりしたらその度に
ドキッとして
妙な所でアクセル踏んでしまって
何度だってサブブレーキで止められた
そうし続ける私に
『あのさ…』
少しだけ言葉を崩して "勘違いだったらゴメン" そんな前置きを於いて
『それってわざと…?…もしかして俺のコト…好きなの…?』
隆二が私の悪態の正体に気付いたのは
クリスマス近くのめちゃくちゃ寒い日_だった
は?って
何言ってんの?って
今までの可愛げのない女のままの私だったら
簡単にそう振る舞えたかも知れない
けど
まっすぐに見詰められて
隆二の瞳の中で私が揺れるのを見てしまったら
可愛げのない女…なんてモノは簡単に消えてった
代わりに
『…だとしたら悪いけど俺、既婚者だから…』
そんな隆二の言葉に傷付いて
「ならさ、そんなコト聞かないでよ…嫌な女を演じさせててよ…」って
ぐしゃぐしゃと涙を流す私だけが残った
好き_になってた…
気付かないフリをしてただけで
もう、とっくに好きだった
けど
好きな気持ちに気付かないフリをしていたのは
そんなコト…知っていたから…
隆二の左の薬指には光るものがあるし
何より、時々、お弁当を運んでくる女の人と隆二が2人で居る場面を見る事もあった…
「…降りる」
いっしょに居るのがたまらなく苦しくて
ブレーキ踏んでパーキングにギアチェンジして
それからハンドブレーキもしっかり掛けて
運転席側のドアを開ける私と
『ちょっと待って…こんな所で降ろせない…』
慌てて助手席側のドアを開けて私の前に立ちはだかる隆二の身体
毎日着用しているはずのウェアなのに
ほんのり香る洗剤の匂いはきっと
奥さんがきちんと洗濯しているから…
…それをこんな近くで嗅がなきゃいけない私の気持ちは…どうしたらいい…?
そう思ったらまた涙が出そうで
『教習所には自分で電話しとくから…体調悪くなって途中で降ろしてもらいました…って言うから…』 私はまた必死で可愛げのない女を徹した
それから後部座席から荷物だけ摑んで
ズカズカ歩いて
…隆二が見えなくなって泣いた……
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梨香(プロフ) - atokさん» こんにちは!コメントありがとうございます!春夏秋冬4つの話を考えた時、隆ちゃんは切な系にしよう!と考えていたのでそんなお言葉本当に嬉しいです!これからもよろしくお願い致します!! (2019年10月20日 11時) (レス) id: 64c500100f (このIDを非表示/違反報告)
atok(プロフ) - せつない冬の恋物語が暖かい涙のラスト良かったです。車を運転する隆二さんの腕。ずっと見ていたい! (2019年10月20日 3時) (レス) id: b336124363 (このIDを非表示/違反報告)
sachi(プロフ) - 梨香さん» 梨香ちゃん、こんにちは。う~うん、全然いいよ。泣きようなお話になるかな。梨香ちゃんのペースで楽しんで書いてね♪。よろしくね(*^-^*)☆ (2019年10月18日 12時) (レス) id: c2612b7e58 (このIDを非表示/違反報告)
梨香(プロフ) - sachiさん» さち!おはよう!返信おそくなってごめんね。新作はぼちぼちと進めていく予定!健二郎ファンのさちには悲しいお話になるかもだけど、これからもよろしくね! (2019年10月18日 9時) (レス) id: 64c500100f (このIDを非表示/違反報告)
sachi(プロフ) - 梨香さん» えへっ(*´∀`)梨香ちゃんの書くお話ほんと好きだし☆新作、健ちゃん!ありがとう( ;∀;)嬉しい♪またワクワクして読んでいくね! (2019年10月12日 16時) (レス) id: 1986c7b750 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:梨香 | 作成日時:2019年9月28日 0時