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_それは最終日から逆算して5日前の日
『今日はお狐様出てこられる気がするんどす』
そんな女将さんの予感めいたひとことで、
私は初めてお狐様と会話した日と同じように
今度はお煮しめをやっぱり2人分…抱えて
ひとり
祠の周りをぐるぐる所在なげに廻ってる
"今日は逢えるかな"
"今日は女将さんの予感通りに出てきてくれるかな"
…なんて。
頭の中はお狐様の事でいっぱい
写真家。なのに
せっかくの "古都" なのに
カメラも置いてきたままだし
それよりなにより
"写真を撮りたい" って気持ちより
"お狐様に逢いたい" って気持ちの方が
ずっと大きく頭の中を支配してる
「お狐様〜!…お煮しめですよ〜」
そんな呼びかけをしながら
この前みたいに
観光客の痛い視線を一身に喰らいつつ
八坂神社の傍の祠の中を覗き込む私に
『あれ?またおる』
そんな声が頭上から舞い降りてきたのは
私が祠の中を覗き込んでから30分程後_だった
今日も着物に身を包んだ姿
決して鮮やかな色…とは云えない着物だけど
それでもお狐様自身が人間でいうところの
"美形" だからか
今日も神々しい光に包まれて視える…
そんなお狐様は
やっぱり私の心をドキリとさせるような
"やんちゃな笑顔" を見せながら
『今日は煮しめか…俺、煮しめ好きやねん…』
そう嬉しそうに笑ったから
私も嬉しくなって
「どうぞお召し上がりください」って。お供え_した。
けれど
『なんかこないだも云うたけどなんでそんな仰々しいん?なんか、まるで神さん、みたいやん…』
お狐様は不意にそう言って
『八坂さんの前やから…?』そう不思議そうに小首を傾げた
…ん?
「…お狐様…は神様じゃないんですか…?」
戸惑ったのは私の方
いや。"神様"か"あやかし"か未だ解らないけど
「…敬語無しで語るのは失礼…かと…思って…」 私は躊躇いながらお狐様の
そのどこまでも私をドキリとさせる
切れ長の瞳と
高い鼻筋と
短いつんつんとした髪…を見つめてみた
『は?…なに…?言い伝え?お狐様…?…ごめん…言うてる意味が全然解らへん』
お狐様の口から零れ出て来る言葉_
「え?…あれ?…」
少しずつ
取り乱していく頭の中
『あ!解った 自分今、五条にある民宿に泊まってるやろ?』 そう溶け込んでいくお狐様の声
確かに私が泊まってる民宿は五条駅の傍にある
けどさすがお狐様
私の居場所すらすぐに当てちゃうんだな…
私がそう思ってポカーンとすると
お狐様はふはっと楽しそうに1つ大きく微笑った
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梨香(プロフ) - atokさん» こんにちは!コメントありがとうございます!春夏秋冬4つの話を考えた時、隆ちゃんは切な系にしよう!と考えていたのでそんなお言葉本当に嬉しいです!これからもよろしくお願い致します!! (2019年10月20日 11時) (レス) id: 64c500100f (このIDを非表示/違反報告)
atok(プロフ) - せつない冬の恋物語が暖かい涙のラスト良かったです。車を運転する隆二さんの腕。ずっと見ていたい! (2019年10月20日 3時) (レス) id: b336124363 (このIDを非表示/違反報告)
sachi(プロフ) - 梨香さん» 梨香ちゃん、こんにちは。う~うん、全然いいよ。泣きようなお話になるかな。梨香ちゃんのペースで楽しんで書いてね♪。よろしくね(*^-^*)☆ (2019年10月18日 12時) (レス) id: c2612b7e58 (このIDを非表示/違反報告)
梨香(プロフ) - sachiさん» さち!おはよう!返信おそくなってごめんね。新作はぼちぼちと進めていく予定!健二郎ファンのさちには悲しいお話になるかもだけど、これからもよろしくね! (2019年10月18日 9時) (レス) id: 64c500100f (このIDを非表示/違反報告)
sachi(プロフ) - 梨香さん» えへっ(*´∀`)梨香ちゃんの書くお話ほんと好きだし☆新作、健ちゃん!ありがとう( ;∀;)嬉しい♪またワクワクして読んでいくね! (2019年10月12日 16時) (レス) id: 1986c7b750 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:梨香 | 作成日時:2019年9月28日 0時