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ーーその日の夜、私は1人で指定の場所で単独任務に当たっていた。
後は帳が上がるのを待つだけだったのに、暫く経っても目に映る背景は黒いままだ。
3級からの昇級を期待していた淡い希望も虚しく、標的を始末してほっとしていたのも束の間……
今、私の前には指定外の準1級レベルの呪霊が姿を現していた。
異形な形をした気味の悪い呪霊と、それから発する呪いの力の強さをビリビリと肌で感じとった私は瞬時に互いの力量の差を理解し死を覚悟した。
ーーこれは1人では片付けられそうにも無い。逃げるにしても直ぐに追い付かれるのがオチだろう。絶対に背は向けてはいけないと本能が警告している。
帳が晴れない事に勘づいた補助監督がヘルプを呼んでくれる事を願いながら、私は地面を蹴りあげて攻撃を仕掛けた。
が、その勢いをかき消すかのように呪霊は体を勢い良く反転させて腕で私を突き飛ばした。
物凄いパワーを持ちかねているようで、受身をとったものの私はハエたたきで叩かれる蠅のように大木へと背中を打ち付けた。
『……ガハッ……』
ーー口の中に血の味が充満するし、背中を打ったため息が出来ない。それにたった一撃で足の骨が折れてしまったようだ。
それでも、立てなくは無いと口の中の血を草むらに吐き捨てて何とか立ち上がる。
『……痛っ』
……やっぱ逃げないとやばい。
でも、
これ、割と直ぐに死んじゃうパターンかも。
そんなことを考えて後ろへ1歩足を下げると、それに気付いた呪霊は再び私に飛びかかってきた。
ーーーーごめん。皆。
お別れも言えずに私死んじゃうや。
まぁ、呪術師に死なんて付き物だし私が死んだって高専には何のダメージも無いだろう。
しょーがないのかな……なんて呑気な事を考えながら目の前に飛んでくる呪霊を見てるその時間はスローモーションのように1秒がそれはそれは長く感じた。
迫り来る痛みに耐えんとキツく目を閉じると、脳裏には五条さんの顔が浮かび上がった。
ーー逢いたい……。
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作者名:シレン | 作者ホームページ:http://lyze.jp/hellomalco/
作成日時:2021年2月15日 16時