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「お疲れ様です」
部活後、帰る支度をし、体育館に向かって声をかけた。
「あれ、赤葦もう帰んの?一緒に帰んねーの?」
「すみません、帰ります」
先輩である、木兎さんにそういい頭を下げてから体育館を出た。
学校を出てすぐにスマホを取り出しAとのLINEのトーク画面を開く。
“マフラーあったかかった?”なんて打ちかけて、指を止めた。
なんだか、今すぐ彼女の声が聞きたい。
右上の電話マークに触れ、一度深呼吸をしてから電話をかけた。
『もしもし?赤葦?』
と電話越しに聞こえてくる彼女の声に
思わず頬が緩みそうになった。
「A、いきなりかけてごめんね」
『ううん、大丈夫だよ。部活おつかれさま』
画面の奥できこえるいつもよりほんの少し高い声と誰よりも落ち着くその話し方
「ありがとう。……帰り、大丈夫だった?」
『おかげさまで。あったかかったよ』
ふふっと柔らかい笑い声が、彼女の表情を浮かべさせた。
いつも一緒に帰っても、特別話が盛り上がるわけではない。
無言や沈黙も普通にあるのだ。
もちろん、電話でも。
「……そっか、よかった」
『うん、……ありがと』
「うん、……」
話すことなんて元々なかったし。
俺と彼女との間に生まれた沈黙に
俺は気まずいと思うことはなく
ただ、なんだかその沈黙さえも、
落ち着くのだった。
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作者名:はあろ | 作成日時:2017年12月22日 23時