一緒に堕ちてやれないよ/fkr ページ37
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目の前に横たわる人。首には手で強く握られたような痕が残っていた。その肌はまだ赤く、すぐに何事もなかったかのように起き上がっても違和感はなかった。
ああ、ひとを殺してしまった。まだ手に残る人間の温もりが、その事実を更に際立たせているように思えた。
「あ、ぁ、そんな」
息が吸えない。浅く呼吸するたびに、漏れ出した嗚咽が部屋に吸い込まれる。まるで高い所にいるかのようだった。どうしよう、酸素の回らない頭ではそんなことしか考えられなかった。
不意に、ガチャリ、と音がした。私の部屋に入ってこれる人物など一人しかいない。なぜこんなにもタイミングが悪いのだろうか。部屋に転がるものを片付ける余裕もないだなんて。
「ただいま____え、何、これ」
「え、ぁ、ああ、こないで、やだ、」
「A、落ち着いて。これは何が____」
「こないでって言ってるでしょ！ 」
机の上に置いてあったものを福良さんへ投げつける。何を投げたかなんて気にする余裕は既になかった。なんで、どうして私だけ、そんな自分勝手な思いが溢れる。
何も考えられない。何も考えたくない。今すぐにでも外へ飛び出して死んでしまおうか。心の叫びが頭に木霊する。
福良さんがゆっくりとその足を進めてくる。十メートルもない距離はあっと言う間に縮められてしまった。視界が歪む。
「A、大丈夫、大丈夫だから」
「ぁ、ふくら、さん、」
座り込んでしまった私はろくに抵抗することもできずに、福良さんの吐き気のするくらい暖かい体で抱きしめられた。指の痺れに彼の温もりが染みる。
「やめて、離して」
「俺はAのこと傷つけたりしないから」
どうしてこんなことになってしまったのだろうか。いつもなら安心するはずの暖かさが、さきほどの光景を想起させる。
「安心して。大丈夫だよ」
「……そう、だね」
もう何も考えたくない、と私は福良さんの肩に顔を埋めた。
彼の手にある携帯電話には、見ないふりをして。
終わり
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匿名 - 偶然こちらの作品に出会い一気読みしました、どれも個性強くてすごく好きなお話です…！動画外メンバーさんのお話が読めてとても嬉しいです。これからの更新を楽しみにしています！ (2020年11月16日 23時) (
レス) id: e8c8d904dc (このIDを非表示/違反報告)
空蝉(プロフ) - 反応遅れてすみません！めっっちゃ良かったですありがとうございました！ (2020年4月25日 23時) (レス) id: c1259f568e (このIDを非表示/違反報告)
すずかぜ(プロフ) - いろさん» ありがとうございますっ!!!絶対かっこいいですよねわかります…… (2020年4月21日 15時) (レス) id: a1f34fb80a (このIDを非表示/違反報告)
いろ(プロフ) - ああ…初々しい好き…myhrさんの甘い顔とか絶対かっこいい…好きです… (2020年4月21日 12時) (レス) id: 5fbef9d1c0 (このIDを非表示/違反報告)
すずかぜ(プロフ) - 空蝉さん» リクエストありがとうございます！もちろん書かせていただきますよ!!!初々しいのいいですよね〜 (2020年4月21日 11時) (レス) id: a1f34fb80a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：すずかぜ | 作成日時：2020年4月16日 19時
