少しズレてる人。【短編集】

なんと幸せなことか/kwkm ページ11

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　私の彼氏である川上さんが、なんとYoutubeの動画に出ていたことを知ったのは、つい最近のことだった。

　しかし気づいたときにはもう遅く、彼はもう動画に出ないというではないか。


「ああ……川上さんがもう動画に出ないだなんて」
「それ昨日も言ってなかった？ 」
「だってすごい寂しいんですもの」


　がっくりと項垂れていると、川上さんが私を慰めるかのように頭を撫でてくれた。やっぱり優しい、好き。

「動画じゃ見られへんけど、目の前にいるからええやろ？ 」

　ああ、川上さん。そんなに優しい顔で見つめられたら、本当にとけてしまいそうです。

　動画でクイズをしている川上さんもとってもかっこいいけど、やっぱり実物を見ると段違いでかっこいい。


「……っ、はいぃ」

　へにゃへにゃした弱々しい声が出る。おかしいな、川上さんといるといつも体が自由に動いてくれない。それもこれも川上さんがこんなにかっこいいのがいけないんだ。


「……で、でもやっぱ動画の川上さんがいいです」
「なんで」


　ジト目で見つめられて変な声が出そうになった。そんな顔もするの、なんだか川上さんがかわいい、なんてことを思ってしまった。



「だ、だって！
現実の川上さんがイケメンすぎて……近すぎ、て……」


　最後のほうは声が消えかかってしまった。なぜなら、私が話している途中から川上さんの顔が何か悪いことを企んでいるような気がしたからだ。


「ふうん、以外と恥ずかしがり屋さんやな。それはええこと聞いたわ。これから楽しみやなあ？ 」


　ついさっき見た動画のコメント欄に書かれていた「ドS川上」とはまさにこのことだろうか。てっきりキャラなのかとも思っていたが、どうやらキャラではないらしい。


　この日から川上さんが私にいたずらをする頻度が高くなり、あのときあんなこと言わなければよかったかも、と思ったのは別の話。

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