君を食べさせて �� ページ37
「卒業おめでとう」
「大学合格おめでとう」
お互いに奢りあった喫茶店の馬鹿高い珈琲とコーヒーをこつんと鳴らす。ふたりでこうして過ごすのは実は久しぶりだった。同じ大学に進学するので、まあ、とくに変わらない生活を続けていくのだろう。
結論から言うと、俺は彼女に好意を寄せるようになった。
まだ、食べられてもいいと思うほどではないのだが。
「A」
「ん？何、とわくん」
「一緒に、暮らそうか」
彼女がぴたりと動きを止める。
真剣な眼差しで彼女を見つめると、Aは頬を赤らめてから、にまぁっと気持ち悪いくらい口角を上げた。
「同棲ってことですか」
「そうなりますね」
「らぶらぶなカップルみたいですね」
「そのつもりなんですけどね」
ふふ、と今度は柔らかくはにかむ彼女の口についたケーキのクリームを拭き取り、「お部屋探しに行きますか？」と問いかける。
そんな誘いを断るはずなく、彼女は立ち上がった俺の掌にするりと自分の指を這わせた。
細く、折れてしまいそうな指をそっと握り、ポケットから財布を取り出す。
「…幸せかもしれない」
「難しいな。人の幸せは、個人個人で違うから。それに幸せだよと俺が断言できるはずないだろ？」
「難しいなぁ、難しいよとわくん」
……ああ、これも、違う。
難しいんだね。幸せを、食べようとしてるのだから。
部屋を探し終えて、1度帰宅すると母親が赤飯を炊いていた。歪になる顔をなんとか戻し、リビングへ向かう。
父親はそわそわしながら新聞を広げていた。いつもは見る気もない俳句のコーナーなんか眺めて、「いい匂いだな」と徐に俺に話しかける。
罪悪感、らしきもの。
俺は、彼女を愛した最後に食べられる。これも、抗えない。俺は間違いなく彼女の魅力に惹かれていた。
テーブルに広がったご馳走に手を合わせ、「ありがとう」と、いつもと違うセリフを吐く。
両親は目を丸くしたが、直ぐに意図を読んで、「とわ」と話しかけた。
どんなことを聞かれるのだろうと身構えると、父親は一言、「そこまで一緒に居ようとする女性はふたりもいない、最後まで責任を持てよ」と言ったきり喋らなくなった。
母親の目にはうっすら、涙が浮かんでいて。
なんだか腑に落ちて、借りてくる予定の部屋と彼女のことをちらほらと喋ると、2人はにこやかに聞いてくれた。
愛するよ。
丁寧に。
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狩人ノ影*(プロフ) - 似鳥さん» 本当に遅くなって申し訳ありません。リクエストありがとうございました！！ (2017年11月26日 16時) (
レス) id: 8bbda9113b (このIDを非表示/違反報告)
似鳥 - 時間かかっても私は大丈夫です！ (2017年11月7日 9時) (レス) id: da11736049 (このIDを非表示/違反報告)
狩人ノ影*(プロフ) - 似鳥さん» コメントありがとうございます！リクエスト嬉しいです(*´ｰ`*)少し時間がかかってしまうかもしれませんが、承りました。 (2017年11月5日 20時) (レス) id: 8bbda9113b (このIDを非表示/違反報告)
似鳥 - こんばんは、初めまして似鳥です。小説が凄く面白くてリクエストしたくなったのですが、towacoさんとフルニキによる夢主の取り合いとか出来ますかね…？ (2017年11月4日 21時) (レス) id: da11736049 (このIDを非表示/違反報告)
狩人ノ影*(プロフ) - あかぺそさん» 温かいコメントありがとうございます！そう言ってもらえると本当に嬉しいです…試行錯誤して読みやすいように心がけているので本当に嬉しいです(´ω`)読んでもらってありがとうございました。 (2016年11月14日 20時) (レス) id: 8bbda9113b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：狩人ノ影* | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/tomoka0315/
作成日時：2016年10月24日 2時
