rantan ＊マシュマロ ページ21
「甘い物、苦手なんだよね」
それは、ずっと嘘だった。
今日の日から逃れるための簡単な嘘。
バレンタインは大嫌いだった。君が居なくなった、最悪な日。今までライバルとも思ってさえいなかったあいつに奪われた日。
「おはよう、蘭たん」
「はよ、ってなんだその袋」
「今日バレンタインでしょ？部活の人たちに。他にもお世話になってる先生とか……蘭たんにもあるよ」
いらねぇよ、と一言だけ言う。
すると彼女はにまりと笑って少し大きめの箱を取り出した。
「そういうと思って、じゃん！蘭たんには特別仕様です」
「……？」
「実は私、甘いの苦手な蘭たんが唯一マシュマロが好きなの知ってるよ？作ってきたんだぁ」
「マシュマロって作れるんだな」
ふへへ、と笑う。
ああ、知ってるだろうな。俺もしってるよ、Aが大好きなマシュマロをあいつが嫌いなこと。
嫌な顔一つしないで、そっかぁなんて笑う彼女が、虚しくて。嫌いだった。
「あいつには、あげなくていいのか？」
「あー、うん。いいの」
ほら、そうやってまた笑う。
「………」
「……わか、れた。」
「なんで？」
「……飽きたって、好きな人できたって。浮気、してた。知らなかった、んだよ？まさか2ヶ月も前から、浮気されてる、なんて。」
不格好に上げられた口角は、震えていて俺はマシュマロを頬張ったまま彼女の手をきゅっと握った。
冷たい彼女は、本当に縮こまっていて。不器用に寄せられた眉も、俺は大嫌いで。
「大丈夫だよ、平気だから。なんも、辛くない。蘭たん、大丈夫だから、ありがとう」
…ほら
「誰もいないよ」
朝早い教室には、人影すらない。
途端にぼろぼろと彼女の目から大きな雫が流れ落ちた。
「……っ慰めて、蘭たん」
「了解」
椅子から立ち上がり、腕を小さな体に巻き付ける。今にも折れてしまいそうなそれは、きっと小さい時から変わってなくて。そっと、できるだけそっと背中を優しく摩った。
嗚咽が段々激しくなって、細い指先が俺の胸元のセーターを弱々しく握る。
そうやって、くしゃくしゃに表情に出るAが、ずっと好きだ。不格好に笑わなくたって、分かるんだ。
「……Aには俺がいるよ」
だから、俺にしなよ。
溶けたマシュマロが甘く口の中に広がっていく。きっと、この甘さは嫌いじゃない。
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狩人ノ影*(プロフ) - 似鳥さん» 本当に遅くなって申し訳ありません。リクエストありがとうございました！！ (2017年11月26日 16時) (
レス) id: 8bbda9113b (このIDを非表示/違反報告)
似鳥 - 時間かかっても私は大丈夫です！ (2017年11月7日 9時) (レス) id: da11736049 (このIDを非表示/違反報告)
狩人ノ影*(プロフ) - 似鳥さん» コメントありがとうございます！リクエスト嬉しいです(*´ｰ`*)少し時間がかかってしまうかもしれませんが、承りました。 (2017年11月5日 20時) (レス) id: 8bbda9113b (このIDを非表示/違反報告)
似鳥 - こんばんは、初めまして似鳥です。小説が凄く面白くてリクエストしたくなったのですが、towacoさんとフルニキによる夢主の取り合いとか出来ますかね…？ (2017年11月4日 21時) (レス) id: da11736049 (このIDを非表示/違反報告)
狩人ノ影*(プロフ) - あかぺそさん» 温かいコメントありがとうございます！そう言ってもらえると本当に嬉しいです…試行錯誤して読みやすいように心がけているので本当に嬉しいです(´ω`)読んでもらってありがとうございました。 (2016年11月14日 20時) (レス) id: 8bbda9113b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：狩人ノ影* | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/tomoka0315/
作成日時：2016年10月24日 2時
