kiyo ＊愛おしかった ページ3
彼の目が好きだった。
笑うと細くなって、柔らかくなる彼の目が大好きだった。
「なんなの」
「いや、慰めに来ただけ」
「振っといて、なんなのよ消えてよ」
「やだよ、親友だもん」
彼は白いスーツに身を包み、珍しく髪が大人しくセットされていた。そう、結婚式だ。大好きだった彼が、知らない女の人と結婚する。
それはあまりにも唐突だった。
知らないうちに出会って付き合って、そのままゴールイン。なんといい話だ。
結婚式の前日、思い切って打ち明けた。貴方を好きだったこと。彼は知ってたと苦しそうに笑った。ああ、その笑った顔もいつのまにか誰かのものなのねと、寂しく私も笑った。
「もう構わないよ私に付き合ってくれなくても。私は私なりに生きていくし」
「なんだそれ。別にお前に遠慮して仕方なく付き合ってるわけじゃねぇよ。俺が、お前と居たくて一緒にいるだけ」
「なら、」
私は先程から握りしめていた箱を彼に投げつけた。
「なら！そんな我儘に私を振り回さないで！！」
少なくとも、私は彼に本気だったんだ。
そんな気持ちがあるなら、最初から私にしてくれればよかったんだ。
「……わりぃ」
なんなのよ。
「正直、分かんねぇんだ。知らないふりして、前みたいに笑って過ごしてさ、それが一番良かったなんて思えねぇんだよ」
「最低ね」
「そうだな。あん時ちゃんとAの気持ち理解しようとしてたら、変わってたのかな」
「やめてよ。今の幸せを否定するつもり？貴方、これからどうしていくのよ馬鹿」
「…………そうだな」
寂しそうに目を細める彼の横顔をじっと見つめて、自分がいやになる。
最後くらい、せめて、最後くらい。
「私、笑ってる貴方の目、大好きだったの。笑ってよ、彼女のために。それを盗み見るからさ」
「…ははっなんだよそれ」
会社の同僚に呼ばれたのか彼は私を見てにかっと笑う。ああ、好きよ。
大好きだったよ、キヨ。
私はスマホに目を落とした。
画面がなかなか揺れて見えなくなって、目を閉じる。すると、きゅっと右手が軽く掴まれた。目を開ける暇もなく、吐息が耳へかかる。
「俺も、Aのこと大好きだったよ」
聞き慣れた声だった。
やめてよ。ダメだよ。
私だって、知ってたんだから。
握られた手のひらで改めて自分の愚かさと、無情さに気づく。彼はやさしかった。そして残酷だった。
そして愛おしかった。
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狩人ノ影*(プロフ) - 似鳥さん» 本当に遅くなって申し訳ありません。リクエストありがとうございました！！ (2017年11月26日 16時) (
レス) id: 8bbda9113b (このIDを非表示/違反報告)
似鳥 - 時間かかっても私は大丈夫です！ (2017年11月7日 9時) (レス) id: da11736049 (このIDを非表示/違反報告)
狩人ノ影*(プロフ) - 似鳥さん» コメントありがとうございます！リクエスト嬉しいです(*´ｰ`*)少し時間がかかってしまうかもしれませんが、承りました。 (2017年11月5日 20時) (レス) id: 8bbda9113b (このIDを非表示/違反報告)
似鳥 - こんばんは、初めまして似鳥です。小説が凄く面白くてリクエストしたくなったのですが、towacoさんとフルニキによる夢主の取り合いとか出来ますかね…？ (2017年11月4日 21時) (レス) id: da11736049 (このIDを非表示/違反報告)
狩人ノ影*(プロフ) - あかぺそさん» 温かいコメントありがとうございます！そう言ってもらえると本当に嬉しいです…試行錯誤して読みやすいように心がけているので本当に嬉しいです(´ω`)読んでもらってありがとうございました。 (2016年11月14日 20時) (レス) id: 8bbda9113b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：狩人ノ影* | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/tomoka0315/
作成日時：2016年10月24日 2時
