1人目のりゅうじんこども ページ4
「驚いたかい?」
と彼の声がします。
千尋は答えません。うつむいたまま、ただ小さくうなずきました。
「もう会わない?」
千尋はやはり答えず、小さく首を振りました。
「でも、震えてる。」
千尋は、答えません。
龍の手がゆっくりと伸び、そっと千尋の白い肩に触れました。鋭い爪が柔らかい肌を傷つけないように、細心の注意を払っているような触れ方でした。
千尋は、
「ー怖くない」
とつぶやくと、顔を上げました。
「あなただから」
彼はゆっくりと千尋を引き寄せ、その唇に優しく触れました。
千尋が、初めて迎える夜でした。
朝になりました。
千尋はベットから裸身を起こすと、隣で眠るハクを見ました。
眠るハクは、人間の姿をしていました。
昨夜の事は、幻ではありません。
確かに、彼は龍へと姿を変えました。
そして自分は、彼を受け入れたのです。
千尋はひとり、これから起こりうる出来事を予想し、覚悟を決めました。
良く晴れた初夏の日の午前。
洗濯物を畳んだ畳んでいた千尋にぐっと吐き気が襲ってきました。
ベットにもたれかかったので、せっかく畳んだ洗濯物が床に落ちました。
千尋は、異変に気付きました。
予感はありました。このひと月ほど妙に体がだるかったり、食欲が無かったりしました。
しかし今日ははっきりと、自らの体の中で起こっていることを自覚できました。
近所の産婦人科を覗くと、待合室は妊婦で溢れていました。
千尋はどうしても中に入れませんでした。あの妊婦たちと自分では、事情が違うと思えました。
千尋は踵を返すと、その足で大学の図書館に行きました。
そして何冊かの妊娠と出産に関する本を積み上げて、内容をノートに詳細に書き写しました。
手に、何冊かの自然出産と自宅出産の本を抱え、外に出ました。
家に帰った時、ハクは千尋を強く抱きしめました。
千尋はうれしくなって自然と笑顔になりました。
冬になると、酷かったつわりは嘘のように収まっていました。父親が龍神だから、龍の子どもが生まれてくるかもしれない、と千尋は改めて思いました。
しかしそうだとしても全く構わない、と思いました。
ただ、早く逢いたい。そう思いました。
千尋は、その小さなアパートで子供を産みました。
太陽が暖かいポカポカ日和でした。
産院の医師にも、助産師にも頼まず、自分達だけで。
赤ん坊は、女の子でした。
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猫(プロフ) - 読みたいです!もしコメントに気づいてまだ書けると思ってくれるならぜひ続きを、、お願いします、、。 (2022年2月26日 0時) (レス) @page6 id: cb072671dd (このIDを非表示/違反報告)
鈴花 - このお話の続き、ぜひ読みたいです! (2019年11月10日 19時) (レス) id: 14419a12fb (このIDを非表示/違反報告)
かいがも(プロフ) - 指摘ありがとうございます (2018年3月8日 22時) (レス) id: a9ab640917 (このIDを非表示/違反報告)
、 - 実在する人物、団体、アニメキャラ等を扱う二次創作になりますのでオリジナルフラグ外して下さい (2018年3月8日 21時) (レス) id: 02e81c184f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:かいがも | 作成日時:2018年3月8日 21時