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山田と想いを通わせた夜から数日後。
仕事が終わって楽屋で携帯を見ると『いつものところ』と簡素なメッセージが見えた。
「了解」とだけ打ち込んで、…きっとこれが最後だろうな、なんてふと思った。
"ここ数日"頻繁に訪れているイタリアンバル。
イマドキな音楽が流れ、間接照明で淡く照らされた廊下を慣れた足取りで歩く。
一番奥の個室。扉を開けると中にいた銀色の派手髪の男は、『おっつぅー!』と手を振ってきた。
「何そのチャラい挨拶」
『いのちゃん、山田と全く一緒の反応してる。流石〜』
「うるさい、光。茶化すな」
ヘヘッとそのチャームポイントである八重歯をのぞかせながら、お茶目に笑う銀髪の男。八乙女光。
メンバーであり、同い年であり、週に一回必ず仕事で顔を合わせる気心の知れた仲で、_____俺の秘密を唯一知っている人。
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コートを脱いでハンガーに掛けて椅子に座って。
飲み物を注文して一呼吸置けば、彼が『ねえねえ、いのちゃん』と俺の名を呼び、手を握られる。
…あ、やっぱりもう、聞こえない。
光はそれが表情で分かったのか、『読めないの?』と聞いてくる。
「読めない」
『ちなみに今、薮をめちゃくちゃにしてたんだけど』
「ゲッ、やめろよマジで。もし読めてたらどーすんだよ」
『うそうそ、冗談。普通にお腹すいたーって考えてただけ』
読めた。読めない。聞こえる。聞こえない。
主語が無くても、俺と光の中では通じる。
『いつから?』
「聞こえないって気づいた時は山田と、…まあ、察してよ」
『チューか』
「察してって言ったじゃん」
『ヘヘヘッ』
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_____俺の秘密。それはある日、人に触るとその相手の心が読めるようになったということ。
_____俺らの秘密。それはその力を使って、お互いの好きな人と結ばれるために手を組んだと言うこと。
そして、こうなったきっかけは、_____理由は分からないけれど、MV撮影の日からだった。
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少しずつ違和感は感じていた。
貰った水を返そうとした時に微かに触れたマネージャーさんから聞こえる声。否、口は動いていない。
メイキングカメラさんにおい!って肩にツッコミを入れた時に聞こえる声。否、口は動いていない。
まさか、人の心が触れただけで読めるなんてそんな。非現実的すぎる。
気のせいだと思うことにしていた。
でも流石に、
(…伊野尾ちゃんのことが、好きだから)
これは無視、できなかった。
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めい(プロフ) - 梓実さん» 梓実さん初めまして。コメント有難うございます!ええ、泣いちゃったところ!どこでしょう! 何考えているのか読めないミステリアスな雰囲気を出せたらなと思っていたので、その感想はとっても嬉しいです! お読み頂き有難うございました! (2020年10月20日 12時) (レス) id: 8807fc94fe (このIDを非表示/違反報告)
めい(プロフ) - Kさん» Kさん、こちらこそコメント有難うございました!同担です〜よろしくお願いします!笑 お話の感想も有難うございます! (2020年10月20日 12時) (レス) id: 8807fc94fe (このIDを非表示/違反報告)
めい(プロフ) - みつこさん» みつこさん初めまして。コメント有難うございます!とってもうれしい感想です〜泣 こちらこそ最後までお読みいただき有難うございました! (2020年10月20日 12時) (レス) id: 8807fc94fe (このIDを非表示/違反報告)
梓実(プロフ) - とっても面白い作品でした!!思わず泣いてしまうところがあって…あんなに泣いたのは久しぶりです笑一瞬伊野ちゃんが怖かったのですが、なんだか安心しました笑笑 今からもう一度読み直してこようと思います!素敵な作品を、ありがとうございました!! (2020年10月19日 21時) (レス) id: 56b32f15d6 (このIDを非表示/違反報告)
K - お返事頂けるなんて嬉しいです!正直同担なのが嬉しくて勢いで送ってしまっていたので笑お話とても面白かったです!ありがとうございました!! (2020年10月17日 19時) (レス) id: 30c662d0e5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:めい | 作成日時:2020年10月4日 19時