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『あれ?今日だっけ』
『なにぃ、ドタキャンする気』
『違うよ。あっ、俺今日いのちゃんと約束してたぽいから…またね!ごめん待ってもらったのに!』
どうやら二人は以前から約束をしていて、結局この車で帰るのは俺と薮ちゃんだけ、ということらしい。
…なんだよ、ヒカのやつ。結局伊野尾ちゃんとご飯行くんだ。羨ましい…。
マネージャーさんが車を出して、しばらくして『…なんか、アイツら最近やけに仲良いんだよな』と呟いたのは薮ちゃんだった。
「え?」
『こないだ…ってもう一週間は前になるか、MV撮影の日からなんか二人でコソコソやってんのが増えた』
「全然気付かなかった」
『まあ、気付いてんの俺くらいじゃね?アイツらも俺が気付いてるなんて思ってないと思うよ』
『バレないように盗み見すんの得意だからさ』と、薮ちゃんはふにゃっと笑う。
「なんで盗み見が得意なの」と聞けば、『ん?内緒ー』とはぐらかされてしまった。
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家まで送ってもらって、ご飯もお風呂も済ませ、ゲームをして過ごしていた時。
目の前のテーブルに置いていた携帯が着信を知らせた。
"伊野尾慧"
画面に表示された名前に、俺の心臓はドクンと跳ねる。
今まで殆ど表示されたことはなかったけれど、一番表示して欲しかったその名前。
出ようとして机に伸ばしかけた手を反射的に引っ込める。いや間違い電話だ、そう思ったりして。
でもその後、数秒も経たずにもう一度かかってくる。
流石に無視出来なくて、通話のボタンを押す。
「も、もしもし…」
『………ぁ!出た出たぁ、良かったぁ。あのね、光と今飲んでるんだけど山田もどうかなって思ってぇ』
電話口で話し始める彼の声は、一瞬でお酒を飲んでいると分かるくらいにふにゃふにゃで、その後ろからは「山田出た?」とヒカの声がした。
『…んぁ、出たよ出てくれた、んねぇ、もしもーし?やまだぁ?聞こえてんの〜?ねぇってば、』
「……あっ、ごめん。うん、聞こえてる。ヒカもいるの?」
『いるいる〜〜ッふふ、誰が代わるかよ、バーカ!お前は一生枝豆でも食ってろ!』
電話の向こうのやりとりで、同い年の二人の仲の良さが伝わる。
対する俺はこんな伊野尾ちゃんの状況を目の当たりにするのは初めてで、焦る。
打ち上げでさえ伊野尾ちゃんがここまで酔っ払っている姿は見たことがない。
俺はこんな時でも伊野尾ちゃんとの距離を感じて悲しくなった。
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めい(プロフ) - 梓実さん» 梓実さん初めまして。コメント有難うございます!ええ、泣いちゃったところ!どこでしょう! 何考えているのか読めないミステリアスな雰囲気を出せたらなと思っていたので、その感想はとっても嬉しいです! お読み頂き有難うございました! (2020年10月20日 12時) (レス) id: 8807fc94fe (このIDを非表示/違反報告)
めい(プロフ) - Kさん» Kさん、こちらこそコメント有難うございました!同担です〜よろしくお願いします!笑 お話の感想も有難うございます! (2020年10月20日 12時) (レス) id: 8807fc94fe (このIDを非表示/違反報告)
めい(プロフ) - みつこさん» みつこさん初めまして。コメント有難うございます!とってもうれしい感想です〜泣 こちらこそ最後までお読みいただき有難うございました! (2020年10月20日 12時) (レス) id: 8807fc94fe (このIDを非表示/違反報告)
梓実(プロフ) - とっても面白い作品でした!!思わず泣いてしまうところがあって…あんなに泣いたのは久しぶりです笑一瞬伊野ちゃんが怖かったのですが、なんだか安心しました笑笑 今からもう一度読み直してこようと思います!素敵な作品を、ありがとうございました!! (2020年10月19日 21時) (レス) id: 56b32f15d6 (このIDを非表示/違反報告)
K - お返事頂けるなんて嬉しいです!正直同担なのが嬉しくて勢いで送ってしまっていたので笑お話とても面白かったです!ありがとうございました!! (2020年10月17日 19時) (レス) id: 30c662d0e5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:めい | 作成日時:2020年10月4日 19時