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いのちゃんが、ギュッと俺の腕に、その細い腕を絡めて微笑む。
タクシーを止めるためにあげていた左手が、すとんと落ちる。
『ふふっ、大ちゃんにはもう渡してあげない』
「っ、なに、を」
『…分かってるくせに。それ、俺に言わせる？』
スッと背筋が凍った。その大きな瞳を弓形にして笑う目の前の彼は、俺の考えていることが全てお見通しとでも言うようだ。
こんな、伊野尾慧、俺は知らない。
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手を下ろしたにも関わらず、タクシーが連続で三台も止まった。
彼は『ほぉ〜ら！時期に止まるって言ったでしょ〜』とパッと俺の腕を離し、奥で話し込む二人を呼びに行く。
家の方角的に、俺、高木といのちゃん、山田の三台に分かれた。
「じゃあね」といって別れられたかはちょっともう記憶が無かった。
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山田は、俺のものなんかじゃないのに。
山田は、いのちゃんのことが好きなのに。
_____そんなのとっくの昔に、知っていたのに。
俺は、焦った。山田が取られると。
どうにかしたかった。
手遅れだと分かっていても、どうにかしたくて。
だって。ずっとずっと、俺が一番近くにいたかった。
いのちゃんなんかに、取られたくなかった。
伝え方を、間違えた。
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『大貴み〜〜〜っけ』
「…知念、」
『涼介が死んだ顔してたけど、大貴も相当死んだ顔してんね』
そう言って口元に手を当ててクスクス笑いながら、しゃがみこむ俺に近づいてきたのは知念だった。
どうしてここが分かったんだろう。
それを聞く前に、『大丈夫だよ』と小さな手で頭を撫でられて。
抑えていたものが、こぼれ落ちる。
「俺、…どうしたら、いいのかな、もう、山田とは、っ」
ポロリ、と零れた言葉。と、涙。
知念はそっと俺の頬に伝う涙を手でぬぐって、微笑んだ。
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『涼介と大貴の間に、なにがあったのかは知らないけどさ』
『大丈夫だよ。僕たち小さい頃からどれだけ同じ時間を過ごしてきたと思ってんの。今更気まずくなるとかないでしょ』
『…まあ、それでもしんどいのなら、その時は。』
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引き寄せられて知念の胸に頬が当たった。
腕がゆっくり背中に回って抱きしめられる。
『僕がずっと大貴の側にいてあげるから、だいじょーぶ』
そんな優しい言葉をかけてくれるから、また涙が溢れて困る。
…今だけ。今だけは、
胸に顔を埋めて、彼の優しさに甘えた。
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めい(プロフ) - 梓実さん» 梓実さん初めまして。コメント有難うございます！ええ、泣いちゃったところ！どこでしょう！ 何考えているのか読めないミステリアスな雰囲気を出せたらなと思っていたので、その感想はとっても嬉しいです！ お読み頂き有難うございました！ (2020年10月20日 12時) (
レス) id: 8807fc94fe (このIDを非表示/違反報告)
めい(プロフ) - Kさん» Kさん、こちらこそコメント有難うございました！同担です〜よろしくお願いします！笑 お話の感想も有難うございます！ (2020年10月20日 12時) (レス) id: 8807fc94fe (このIDを非表示/違反報告)
めい(プロフ) - みつこさん» みつこさん初めまして。コメント有難うございます！とってもうれしい感想です〜泣 こちらこそ最後までお読みいただき有難うございました！ (2020年10月20日 12時) (レス) id: 8807fc94fe (このIDを非表示/違反報告)
梓実(プロフ) - とっても面白い作品でした！！思わず泣いてしまうところがあって…あんなに泣いたのは久しぶりです笑一瞬伊野ちゃんが怖かったのですが、なんだか安心しました笑笑 今からもう一度読み直してこようと思います！素敵な作品を、ありがとうございました！！ (2020年10月19日 21時) (レス) id: 56b32f15d6 (このIDを非表示/違反報告)
K - お返事頂けるなんて嬉しいです！正直同担なのが嬉しくて勢いで送ってしまっていたので笑お話とても面白かったです！ありがとうございました！！ (2020年10月17日 19時) (レス) id: 30c662d0e5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：めい | 作成日時：2020年10月4日 19時
