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『今度はお顔を寄せてみて〜…あ、そうそう。伊野尾さん肩とか組んじゃいましょうか』と、背中合わせから体育座りで正面を向いたポーズヘ。
監督さんの指示通りに伊野尾ちゃんの腕が俺の肩に回った。寄り添う感じで、何枚か撮る。
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不意に伊野尾ちゃんが目線はカメラに向けたまま、『禁断ってどんな感じかな』と言った。
思わず「え?」と彼の顔を見るけれど、依然として正面を向いたままで。
フラッシュは、やまない。
『ほら。さっき監督さんが、禁断の、って言ってたでしょ』
「えっ…顔を近づけるとかでいいんじゃないの?」
『それも一つだけどさ。ねえ…山田、』
「なに、…へっ」
我ながら気の抜けた声だなと思った。
でも、本当にそれは一瞬の出来事で。
_____彼が抱いていた俺の肩を自分の方に強く引き寄せて、距離が一気に詰まった。
花の匂いと混ざって、香水ではない、…これはきっとシャンプーだ。
君からふんわりと自然な良い香りがして、クラッとする。
理解が追いつかないまま。
気がつけば目を伏せた君の睫毛の長さが分かるくらいの、そんな距離で。
『…そのままでいて』
そう囁いた君は、俺の顎にするりと細くて長いその手をかける。
軽く引き寄せられて
顔が強制的に君の方に向いて
視線と視線が、絡み合う。
鼻と鼻が触れそうで、触れないこの距離。
身体は金縛りにあったように動かない。
こんなに近いのは初めてで。
その綺麗な澄んだ瞳の中に映っているのが俺だと分かって、想いが弾けた。
…すきだ。すき。
呼吸をするのも忘れるくらい、撮影だということも忘れるくらい。
そこに広がるのは、俺と君、二人だけの、世界。
フラッシュは、やまない。
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『…ハイッ!オッケー!』と熱量たっぷりの監督さんの声に我に返った。慌てて彼との距離を取る。
モニター前のメンバーから『なに今の!』『ヤバいよ二人とも!』という声が聞こえて、スタジオ内もどこか高揚している感じがした。
な、なんだったの。今。
心臓が破裂しそうなほどドキドキしている。
だって。…だって。こんなの。
だけど、目の前の君はこういって余裕そうに優しく微笑むんだ。
『良いの、撮れたかな』
ずるい。ずるいよ。
こんなに夢中にさせといて。
きっと今のもただの気まぐれ。そうなんでしょ?
…ずるい。
『チェック行こっか』と余韻もなく立ち上がる君の背中に、「すき」と小さく呟いた。
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めい(プロフ) - 梓実さん» 梓実さん初めまして。コメント有難うございます!ええ、泣いちゃったところ!どこでしょう! 何考えているのか読めないミステリアスな雰囲気を出せたらなと思っていたので、その感想はとっても嬉しいです! お読み頂き有難うございました! (2020年10月20日 12時) (レス) id: 8807fc94fe (このIDを非表示/違反報告)
めい(プロフ) - Kさん» Kさん、こちらこそコメント有難うございました!同担です〜よろしくお願いします!笑 お話の感想も有難うございます! (2020年10月20日 12時) (レス) id: 8807fc94fe (このIDを非表示/違反報告)
めい(プロフ) - みつこさん» みつこさん初めまして。コメント有難うございます!とってもうれしい感想です〜泣 こちらこそ最後までお読みいただき有難うございました! (2020年10月20日 12時) (レス) id: 8807fc94fe (このIDを非表示/違反報告)
梓実(プロフ) - とっても面白い作品でした!!思わず泣いてしまうところがあって…あんなに泣いたのは久しぶりです笑一瞬伊野ちゃんが怖かったのですが、なんだか安心しました笑笑 今からもう一度読み直してこようと思います!素敵な作品を、ありがとうございました!! (2020年10月19日 21時) (レス) id: 56b32f15d6 (このIDを非表示/違反報告)
K - お返事頂けるなんて嬉しいです!正直同担なのが嬉しくて勢いで送ってしまっていたので笑お話とても面白かったです!ありがとうございました!! (2020年10月17日 19時) (レス) id: 30c662d0e5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:めい | 作成日時:2020年10月4日 19時