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邂逅 2 ページ18

『ん…、寝てた…?』

Aはふと、身体の痛みに目を覚ました。

あれ…?私いつの間に寝てたんだ…?と不思議に思い、あたりを見渡す。
見慣れない部屋の間取り、無機質で生活感の欠片も無い空間。
あるのは自分が寝ていたベッドと目の前の壁に取り付けられたドアのみ。

なんでこんな見慣れないところに…?

そうだ、私はあの黒コートの男にいきなり襲われて…。

『ッ!!』

秒で意識が覚醒する。
ベッドから素早く跳ね起き、戦闘態勢を取る。

何か盛られてはいないだろうか。大丈夫、体に異常は見られない。
何か使える武器は?駄目だ、この部屋にはベッド以外置かれていない。

瞬時に考え、パニックにならないよう息を吸う。
大丈夫だ。相手は誰なのか、何のために私を誘拐したのか。突き止めて、ここを脱出する。私は武装探偵社の一人なんだ。それくらい出来なくてどうする。

心を固め、ドアを開けようとした瞬間。逆にドアがこちら側に開いた。

『誰!?』

すぐにドアから離れ、再度拳を構える。

入ってきたのは、今日の話題にも上がった芥川龍之介その人だった。


『芥川…!!』

写真では何度も見たことがあるが、対面するのはこれが初めてだった。
そのはずだ。
だと言うのに、芥川は目を大きく開き歓喜に打ち震えた声でAの名を呼んだ。

「A…!嗚呼、A…!!」

そしてAの方に歩を進める。
Aは予想外の出来事に恐怖を感じ、後ずさりする。

「会いたかった…!…久し振りだな。息災だったか?」

まるで以前も会ったような話し方。Aは訳がわからなかった。

『私と貴方は初対面のはずだよ。誰かと思い違いをしてるのでは?』

Aは当然の発言をしたつもりだった。
なのに目の前の男は酷く悲しそうな顔をする。

その意外な様子に驚いたAだったが、すぐに好機だと思い芥川から離れようとする。
しかしその足を芥川の羅生門が捉え、Aは盛大に転んだ。

芥川は溜息をひとつ吐き、語るように言葉を紡ぎながらまたAのもとに近づく。

「そうか、そうであった。僕も無自覚のうちに舞い上がっていたのやも知れぬ」
「A、僕と貴方は初対面では無い。貴方が僕のことを忘れているだけなのだ」
「そうだな。まずは然るべき段階を踏まねばならぬ」

羅生門に足を拘束され未だ起き上がることの出来ないAの頬に、芥川は手を置いた。

「僕の名は芥川龍之介。だが貴方には、“盛遠(もりとお)”と名乗っていた」

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牧野江(プロフ) - 黄身麻呂さん» コメントありがとうございます。芥川のお話は特に書きたいものだったのでそう言っていただけるととても嬉しいです。主人公ちゃんに付きまとって勝手にメロメロな芥川、文字列だけでも最高です。書かせていただきます!ありがとうございます。 (2021年1月5日 19時) (レス) id: c6b47ba73e (このIDを非表示/違反報告)
黄身麻呂 - とてもクオリティが高いこの小説が大好きです!特に主人公を勝手に神格化する芥川が性癖に響いて「邂逅」は何度も読み返してます(笑)リクエストで、もし可能でしたらまた主人公に付き纏ってメロメロな芥川がみたいです!よろしくお願いします!! (2021年1月3日 0時) (レス) id: 1955a7e5f1 (このIDを非表示/違反報告)
牧野江(プロフ) - 紅月ミレーさん» 遅くなりまして申し訳ありません。自己満のためにこの話を書いているので自分の欲を優先してリクの話は書く事が遅れてしまうかも知れませんがそれでもよろしければリクエストも受け付けようと思います。ありがとうございます。 (2020年11月27日 13時) (レス) id: c6b47ba73e (このIDを非表示/違反報告)
紅月ミレー - すみません、リクは有りですか(´・ω・`)? 太宰治様に笑顔で呼ばれるシーンを何度も見てしまいます(*^□^*) (2020年10月8日 18時) (携帯から) (レス) id: a496965e6a (このIDを非表示/違反報告)
紅月ミレー - 牧野江さん» ありがとうございます(≧∇≦) 楽しみに待ってます(*^□^*) 今回も面白かったです、皆心配してたんですね(^ω^) (2020年9月16日 17時) (携帯から) (レス) id: a496965e6a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:牧野江 | 作成日時:2020年8月30日 1時

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