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買い物に行こう 5 ページ11

『あれ、谷崎くん?ナオミちゃんと与謝野さんは?』

試着室から出ると、いつも待ち構えている二人の姿は無く谷崎だけがAを見ていた。

「あっ、あぁ!えッと、2人は少し別の店に用事があるとかッて!だから代わりに僕がここで待ってるようにナオミに言われて…」

何故かしどろもどろに話す谷崎にAは若干不思議に思うも持ち前の単純さですぐにその話を受け入れた。

『そうなんだ!二人ともペース速いなぁ…。あ、じゃぁ谷崎くん、この服似合ってるかな?』

いつも似合っているかのジャッジをしてくれる2人がいないので、目の前の谷崎に尋ねてみる。
すると谷崎はあからさまに動揺した声を上げた。

「ヒェッ、あ、あの…、とても似合ってます…!その、すごく素敵で、Aさんの可憐さが際立ッていて…!」

あと、とてもボク好みです…!とは流石に言う勇気が無かった。
それでもAは少し気恥ずかしそうに眉を下げた。

『あはは、ありがとう。そうだ。この服ね、ナオミちゃんが選んだんだよ』

通りでボク好みなわけだよ!!ナオミありがとう!!
谷崎は心の中でナオミを絶賛した。

『じゃぁこの服は谷崎くんのお墨付きッて事で!すいませーん!お会計お願いしまーす!』

にぱっ!と眩しいくらいの笑顔を見せたAに谷崎は心音が高鳴るのを感じた。
綺麗で、まっすぐで、何事にも明るいその姿勢が、ひどく愛しい。
彼女を護りたいという気持ちに強く突き動かされる。
彼女の愛らしさを、ひたむきさを、自分が護っていきたい。自分はけして強いわけでは無いけれど、自分に出来ることなら何だッて。
谷崎はAの笑顔を見て、そう思った。

「Aさん、お会計ボクが出しますよ」

『えっ、いやそれは流石に…!年下で後輩に自分の洋服を買ってもらうなんて…』

「いやボクに出させてください」

1人の男として、Aさんには格好良く見て欲しいから。ちょっとは見栄を張らせてほしい。

『う…、じゃぁ今度、何か奢らせてね。お昼ご飯とか』

そう言ってちょっと不満そうに引き下がるAさんを愛しく思いながら会計を済ませる。
洋服が詰められた紙袋を店員から受け取ったAは、それを見て嬉しそうに小さく微笑んだ。


却説、店の外でナオミと与謝野先生が待ッてるはずなんだけど…。
辺りを見回す谷崎に一通のメールが届いた。

“兄様へ 先に帰っていますね。A姉様と二人きり♡ファイト!♡”

谷崎は息が詰まるのを感じた。

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牧野江(プロフ) - 黄身麻呂さん» コメントありがとうございます。芥川のお話は特に書きたいものだったのでそう言っていただけるととても嬉しいです。主人公ちゃんに付きまとって勝手にメロメロな芥川、文字列だけでも最高です。書かせていただきます!ありがとうございます。 (2021年1月5日 19時) (レス) id: c6b47ba73e (このIDを非表示/違反報告)
黄身麻呂 - とてもクオリティが高いこの小説が大好きです!特に主人公を勝手に神格化する芥川が性癖に響いて「邂逅」は何度も読み返してます(笑)リクエストで、もし可能でしたらまた主人公に付き纏ってメロメロな芥川がみたいです!よろしくお願いします!! (2021年1月3日 0時) (レス) id: 1955a7e5f1 (このIDを非表示/違反報告)
牧野江(プロフ) - 紅月ミレーさん» 遅くなりまして申し訳ありません。自己満のためにこの話を書いているので自分の欲を優先してリクの話は書く事が遅れてしまうかも知れませんがそれでもよろしければリクエストも受け付けようと思います。ありがとうございます。 (2020年11月27日 13時) (レス) id: c6b47ba73e (このIDを非表示/違反報告)
紅月ミレー - すみません、リクは有りですか(´・ω・`)? 太宰治様に笑顔で呼ばれるシーンを何度も見てしまいます(*^□^*) (2020年10月8日 18時) (携帯から) (レス) id: a496965e6a (このIDを非表示/違反報告)
紅月ミレー - 牧野江さん» ありがとうございます(≧∇≦) 楽しみに待ってます(*^□^*) 今回も面白かったです、皆心配してたんですね(^ω^) (2020年9月16日 17時) (携帯から) (レス) id: a496965e6a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:牧野江 | 作成日時:2020年8月30日 1時

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