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別荘から帰った後……とある日の日常。
「ねえ、中将。そろそろ紅葉が散ってきたわ。」
「ええ、残念ですね。けれど、冬には雪が降りますよ。寒いのは残念ですが……」
秋のしみじみとしたのもすきだけれど、私は雪も大好き。氷室に残しておいたら夏に使えるし、そうじゃなくても、あの美しい白さ。心が踊る特有の楽しさがある。
「何か歌を詠みなさいよ。あなた、巧いでしょう？中将」
「しかし……」
戸惑う中将。
「昔の歌でいいわ。何か詠みなさい」
「心あてに 折らばや折らん 初霜の……」
「置き惑わせる 白菊の花、ね」
雅な冬が始まる。
「雅！雅！おまえを妃にとりたててもらえることに決まったぞ。よかったなぁ」
「え……？」
「女御だ、よかったな、雅。梅壺を独り占めだぞ」
その瞬間、名前もわからなかった人のことを思い出した。
「私は！」
「なんだ？」
「いえ……何も」
どうせあんなの遊びに決まってる……私を大切にしようと思ってくださった訳ではない。
それなら帝からの愛を求め、女御になった方が安全。
「帝に嫁がせていただくこと、いとうれしゅう思います」
着物はいかがいたしましょう、もっと女房も増やさねばなりません、と言いながら私はたくさんの衣をだす。
「この萌黄を着たいわ。五衣と唐衣は新しいのが欲しいわね。流行に頼りすぎずに時代遅れでないものが理想的だけど……お父様、中将、頼めますか」
父の内大臣は嬉しそうに言う。
「お金は私が出そう。中将は衣を選んでやりなさい」
「はい。優れた女房何人かと吟味して考えます」
私は微笑んで言った。
「入内はいつです？春なら衣が用意しやすいけれど、冬はちょっとね……」
「花の舞う三月だよ、梅壺の花も綺麗に咲くだろう」
「それは喜ばしいこと。さて、私は琴でもやりましょう。お父様、それでは」
私はたいそう機嫌よくその日を終えた。
3日後……箏を奏でて楽しんでいると、懐かしいような声がした。
「やっと見つけたよ……姫君」
「あなた、この前の……！？」
晩秋の風が吹く。
「入内する予定の姫君がいないか、ずっと探っていたんだ。やっと見つけた」
「いけません、私は」
「分かってる、今日は月を見ようと思って、お誘いをかけにきた」
……月？
「確かに今宵は満月ですが、中秋の名月は終わりましたよ」
「分かっている。今日はね、占いによると赤い月が見られるんだ」
赤い月？
「本当ですの？」
「出ておいでよ、見せてあげよう」
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清原諾子 - はじめまして、清原諾子です。歴史の中でも平安時代が一番好きで、この作品がすぐに好きになりました。これからも頑張ってください。 (2018年7月9日 7時) (
レス) id: c298dbb326 (このIDを非表示/違反報告)
藍城彩(プロフ) - はじめまして。藍城彩です。私は、平安の話は苦手なのですが、この話は引き込まれていきます。これからも、頑張ってください。 (2018年7月8日 17時) (レス) id: ecf7c6d4da (このIDを非表示/違反報告)
アサノ(プロフ) - はじめまして、アサノと申します。凄く魅力的な作品で思わず、引き込まれました。これからも頑張って下さい。 (2018年4月16日 0時) (レス) id: 2c5d1feb72 (このIDを非表示/違反報告)
作者より - いろいろありがとうございます。顔を見られたのは雅ちゃんの不注意、顔を見られても動揺しなかったのは、「帝の妃に」という教育方針のせいかな？なんて。すみません。頑張ります、 (2018年4月15日 21時) (レス) id: 8d3c83900b (このIDを非表示/違反報告)
ぺったんこ＠受験終るまで更新できません(プロフ) - (追記)現在のように、男性が不法侵入してただ体を強張らせるだけではなく、もっとドン引きさせても良いのかなぁ、と。。長々とｽﾐﾏｾﾝ・・・ (2018年4月15日 21時) (携帯から) (レス) id: 46235445be (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ΨΨ | 作成日時：2017年10月4日 18時
