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別荘には、薫子や、宮子内親王様、多くの貴族たち、それに、右大臣の三人の姫君たちもいた。
華やかな宴が催され、指名された者が舞を披露していく。右大臣の姫や、宮子様は早々に舞を披露した。薫子は巧いので、真打と決まっている。
私の名前は呼ばれない。私は席を立ち、一番人気のないさびしい庭に入った。
紅葉が、月に照らされて輝いている。私はその下で、部屋に置いてあった笛を取り上げて、吹いた。悲しい、悲しい旋律だった。私はそれに乗せて、静かに舞を舞った。たった一人、寂しく舞った。
夜、ちょうどその庭に面した部屋で寝ることが決まった。召使は違う部屋にいる。私の部屋に訪れる人はいない。
「おやすみ……」
御簾を下ろし、月をもう一度だけ見上げた。ため息をついて寝所に向かう。
「月がお好きなのかい、お姫様？」
後ろの御簾を上げて、何者かが部屋に入ってきた。
「どなたなの……？」
暗いので顔はよく見えないが男の人のようだ。思わず身が強張る。
「君の舞に惚れたんだ。君、今日あそこで舞を踊っていたろう？」
見られていたのか……
「あ、あれは……ですね」
「五年前……同じ場所で踊っていたのも君かい？」
私は少し悩んで頷いた。時々あそこで笛を吹いたり踊ったりする。
「そうか……君は、五節の舞姫では、ないのだね？」
「はい。先ほどの舞にも、一度も名を呼ばれておりません。私なんて、所詮ただの貴族の娘ですから」
「そうか……君、名前を教えて下さらないかな？無理なら、お父様のご身分でもかまわないよ」
なかなか紳士的な人のようだ。身分の高そうな、良い香りが漂う。
「後悔しますわ……あなたには、もっと良い人がいるでしょう？左大臣の娘の薫子は舞がとてもお上手です」
一陣の風が吹く。幾らか沈黙が続いた後、男の方が口を開いた。
「つまり、教えて下さる気はないのだね？」
「私は……帝に嫁ぐように言われております。不可能とは存じますが、親の命令ですから……」
自分の意志を貫き通す薫子と違い、私には何もない……。
「君は、自信過少な人のようだね。何も最初から諦めることはないんだ」
「しかし、私は……！！」
「月の神 光るのみをば 思ゆれど 萬を見ける 君の涙も」
＿月の神は光っているだけとお思いかもしれませんが、全てを見ています。君の涙もね＿
「もう時間だ……また来るよ、姫君」
突然現れて、風のように去っていた人……誰かを知る由もなく、知ろうとも思わなかった。
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清原諾子 - はじめまして、清原諾子です。歴史の中でも平安時代が一番好きで、この作品がすぐに好きになりました。これからも頑張ってください。 (2018年7月9日 7時) (
レス) id: c298dbb326 (このIDを非表示/違反報告)
藍城彩(プロフ) - はじめまして。藍城彩です。私は、平安の話は苦手なのですが、この話は引き込まれていきます。これからも、頑張ってください。 (2018年7月8日 17時) (レス) id: ecf7c6d4da (このIDを非表示/違反報告)
アサノ(プロフ) - はじめまして、アサノと申します。凄く魅力的な作品で思わず、引き込まれました。これからも頑張って下さい。 (2018年4月16日 0時) (レス) id: 2c5d1feb72 (このIDを非表示/違反報告)
作者より - いろいろありがとうございます。顔を見られたのは雅ちゃんの不注意、顔を見られても動揺しなかったのは、「帝の妃に」という教育方針のせいかな？なんて。すみません。頑張ります、 (2018年4月15日 21時) (レス) id: 8d3c83900b (このIDを非表示/違反報告)
ぺったんこ＠受験終るまで更新できません(プロフ) - (追記)現在のように、男性が不法侵入してただ体を強張らせるだけではなく、もっとドン引きさせても良いのかなぁ、と。。長々とｽﾐﾏｾﾝ・・・ (2018年4月15日 21時) (携帯から) (レス) id: 46235445be (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ΨΨ | 作成日時：2017年10月4日 18時
