こんなヒロインは嫌だ。【オリジナル】

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おれは、いつだって一番だ。


勉強はもちろん、見た目から馬鹿にされそうだけど大抵の運動はできる。バスケットボール、陸上競技、野球。水泳だけはそんなに得意でもないけど、それでも人並みには泳げる。

歌だって絵だって、なんでもこなせる。


通知表は小学校のときから一番左に丸がずらっとならんでいたし、中学生になったらそれが5に変わったくらいだ。特に目立った変化はない。



自分が天才だと、ずっと思っている。口に出したら反感を買うのはわかりきっているから、心の中で留めておくだけだ。自分で主張しなくたって、周りの連中も理解しているはずだ、と。



『武田Aは天才だ、神さまみたいだ』と。





何もない朝。黙って本を読んでいたら、クラスのやつがおれの机にひょいっと表れた。


｢武田〜！ 宿題写させてくれよ！俺やってなくてさ！ 頼むよ学年一位！｣


またか。


｢しょうがねえなぁ〜、いいよ、写しな。その代わり、先生に説明しろって言われても知らねえぞ？ お前今日、当たる日だろ？｣


｢ああああ！！ やべえ、ド忘れしてた！ とっ、とりあえず、写してから考えるわ！ ほんっと〜にありがとな！｣


何度もペコペコしながら、課題を写してそいつは去っていった。



滑稽で仕方がない。


どうせ影では｢ガリ勉｣だの｢つまんないやつ｣だの俺のことを罵っているんだろうに。こんなときだけ俺に頭を下げなくちゃいけないそいつのアホらしさが、滑稽で仕方がない。


だから嫌いなんだ、目先のことしか考えていない脳筋は。授業で当たるって知っているなら、俺に何度頭を下げてでも解説を乞えばいい。


課題を｢とりあえず｣写して満足してしまう、そんな付け焼き刃な解決策で満足してしまう人間。


アホらしさを通り越して、むしろ可哀想にすら思えてくる。嫌いだからそんな情けはかけないが。


円滑な人間関係のために、と軽率に課題を見せてしまった自分に、ほとほと嫌気が差した。


またクラスメイトと駄弁っているそいつを一瞥し、俺は再び本に目を落とす。


どんなにダメな主人公でも、たくさん友達がいるっていうのにな。友達に執着するだけ馬鹿を見るか。






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