episode 011 ページ11
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彼女の瞳が
微かに
揺れている気がした。
A ｢ステルベンを略して、ステったって言うの｣
JH ｢… … …｣
A ｢看護師さん達が言ってるの聞いて知っちゃたんだよね｣
そんな言葉、
できれば知りたくなかった。
ましてや
Aの口から
そんな言葉の意味を
知りたくなかった。
A ｢… … それにね、あの病室は｣
JH ｢… ?｣
A ｢あの病室は、死が近い人が行く部屋なの｣
JH ｢… … …｣
A ｢… … … 私もたぶん、そのうち｣
JH ｢言うな｣
A ｢… … ジョンハン ?｣
JH ｢… もうそれ以上、何も言うな｣
Aに
出逢った時から、
分かっていた事なのに。
───────── " 私ね、癌で入院してるの "
彼女には
時間がないと
分かっているのに。
なのに
その事実が
分からなくなる。
だってAは今、
俺の隣にいて
くだらない話をして
笑い合えていて
見えるんだから。
癌なんてものを
背負っているようになんて
見えないのだから。
JH ｢… Aには、まだじゃん｣
A ｢… … … なにが ?｣
JH ｢… … まだ、Aには時間がある｣
A ｢… … …｣
JH ｢俺と友達になったばかりのくせに、勝手に先走るな｣
その時やっと
目が合ったAは、
瞳は揺れていたけど
ゆっくり
瞬きをしてから
小さく微笑んだ。
A ｢… … ジョンハンが、友達でよかった｣
その言葉は
とても嬉しいものなはずなのに、
俺の耳には
とても悲しく切なく
響いていた。
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作者名：しろくま
| 作成日時：2022年7月5日 5時
