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それを一口流し込めば口の中いっぱいに柑橘系の爽やかな香りが広がった。汚い店構えとは思えないぐらい美味しい。
「に、しても…華のJDともあろう娘が休日に元担任と夕飯ってどーよ?」
「何なんですか、そっちから呼び出しておいて」
「だって大学生ヒマだろ?」
「アンタかよ」
私に『大学生=暇人』という刷り込みをしたのは、どうやらこの男だったらしい。私は溜息を吐きながら「めちゃくちゃ忙しいですよ、実際」とまたジュースを飲み込む。
「じゃあ尚更休みの日ぐれェ断っても良かったじゃねーかよ、そっちで日にち指定してくれゃあ俺だって合わせてやったのに」
後から考えれば…この時の先生の台詞を私お得意の深読みで分析すれば彼の気持ちにも気付けたのかも知れない。けれども私の脳内では別の言葉が先に浮かんでしまって…きっと、そっちが私の本音でもあったのだろう。
「だって平日の夜なんて先生もっと疲れてるじゃないですか」
「は?」
「教職って放課後もずっと仕事してるでしょう?お疲れの先生を呼び出すなんて出来ませんよ、私」
高校時代から知っていた。
この人はやる気無さそうに見えて、怠惰に見えて、何も考えていないように見えて…本当はすごく生徒思いの良い先生なんだって。本当は…知ってる。
そんな先生の休日を潰してしまっているのは、きっと私の方で。そんな後ろめたさもあるのに…こうして懐かしむ事を喜ぶ自分も居る。何とも現金なものである。
そんな私の言葉に先生は暫く惚けた表情をして、やがて「あ"〜〜…!!」と机に突っ伏して呻き出したのだ。
「お前ソレはねーよ、ダメだよ聖職者として。相手は未成年なんだぞ、未成年未成年未成年……よし、よしよしよし良い子だ俺の息子。そのまま鎮まれ〜鎮まれ〜〜」
「な、何ですか突然意味不明な…飲み過ぎたんですか?」
情緒不安定な先生は私の言葉に顔を上げると、さっきよりも赤くなった顔で私にこう叫んだ。
「オメー二十歳になったら覚悟しとけよ」
相変わらず何が言いたいのか分からなくて私は「初飲酒に付き合う名目で自分が飲みたいだけですよね、ソレ」と苦笑する。
「そうだな、てめェが酔い潰れた時にゃあ介抱プラスでオプションでも付けてやらァ」
「それは楽しみですね」
そう笑って私は残りのジュースを飲み干す。
この二年後、私は彼にどんなオプションを付けられたのか…それは二人だけの秘密だ。
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生徒に踏み止まって、今度は未成年に踏み止まる男の話でした。
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月ヶ瀬ましろ(プロフ) - 詩織さん» コメントありがとうございます!内容によってはお待ちして頂く事になりますが受け付けておりますよ(^-^)/ (2017年7月12日 21時) (レス) id: b30e496864 (このIDを非表示/違反報告)
詩織 - リクエストって、今も受け付けてますか? (2017年7月12日 17時) (レス) id: e1eb8c8d20 (このIDを非表示/違反報告)
lying doll(プロフ) - みかづきさん» ありがとうございます(´∀`*)了解致しました〜 (2016年8月29日 11時) (レス) id: 9b1d9c93d0 (このIDを非表示/違反報告)
みかづき - リクエストよろしいでしょうか?「嘘嫁」の番外編が見たいです。 (2016年8月29日 9時) (レス) id: 9bc726f217 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:月ヶ瀬ましろ | 作成日時:2016年8月28日 19時