heartfelt X

# ページ9

「『乾杯、』」



少ししてから運ばれて来た美味しそうな料理の数々。カチンとグラスを合わせてビールを喉に流し込む。




『2人でお酒飲むのって初めてだね。岳はシーズン中飲まないから。』


岳「そういやそうだな。疲れたし風呂入ったしですぐ酔い回りそう。」


『気持ちよーく眠れるね。』


岳「あ、A写メ撮ろう。折角の浴衣だし。」




ぐいっと肩を引き寄せられてパシャり。素敵な旅の1枚。





岳「肉うま！とちぎ牛うま！」


『湯葉も美味しい〜！とろとろ！』




見た目も綺麗な美味しい夜ご飯に舌鼓。
さっきまで "夕飯の時間変更できないかな" なんて下心全開だった岳も今はお肉を頬張りご満悦。






岳「腹いっぱいー。ちょー美味かった。」


『ほんと美味しかったね。』




デザートまでペロりと平らげてご馳走様をすると岳は畳の上でゴロゴロ。今日はずっと運転してもらってたし、お疲れだよね。





仲「失礼します。お食事はお済みですか？」


『とても美味しかったです。ご馳走様でした。』


仲「こちらお下げしますね。宜しければ旅館の裏が庭園になっておりますので足を運んでみてください。」


『庭園！岳行こうよ！』


岳「んー。」


仲「ご予約いただいたお風呂のお時間までのんびりお寛ぎいただけると思いますよ。」


『ご予約？』


仲「家族風呂をご予約いただいてますよね？」


岳「はい。してます。」



いつの間に！岳は "どうしたの？" とでも言いたげな視線を私に向ける。内心しめしめと思ってるくせに。





仲「では失礼いたします。」


『ありがとうございました。』




テキパキと机の上を片付けた仲居さんは温かいお茶まで淹れてくれてそれを啜る。岳は相変わらずiPhone片手にゴロゴロ。






『家族風呂予約してたの？』


岳「何種類かあって、どれがいいですかー？って言われたからおすすめにした。1時間貸し切れるんだって。」


『もー、聞いてない。』


岳「嫌？嫌なら俺1人で行ってくるけど。」


『私も行くよ！おすすめの温泉入らないわけにはいかないもん！』


岳「そう言うと思った。」




ニヤリと笑う岳にはこんなところでも勝てない。



予約しといてくれてありがとうと言おうかと思ったけれど、Aも混浴したかったの？と馬鹿にされる気がして、小さな声で "お風呂の準備しなきゃ" とつぶやく。




目線はiPhoneに向けたままふっと鼻で笑った彼にはきっとお見通しだと思うけれど。

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