検索窓
今日:3 hit、昨日:4 hit、合計:15,868 hit

. ページ3

大葉は居眠りなんかしない人間だが、もしその時は起こしてやろうと思った。俺は彼女のように起こすことはできないが、肩を突いた時の反応は容易に頭に思い浮かんだ。ちょっとかわいかった。


俺を起こしてくれるような奴は今隣にいないし、俺が起こしてやりたいと思う奴も隣にはいない。今隣にいる奴が寝てようが起きてようがどうでもいいが、もしも隣に座る大葉が居眠りなんかしていたら俺は、きっとどうしようもなく戸惑うのだろう。疲れてるのか。寝てないのか。風邪でも引いてたらどうするんだ。インフルエンザにかかって、トイレから出てきたやけに顔色の悪そうな大葉を見た時、もっと早く気づいてやればよかったのにと自分を責めたことを思い出す。大丈夫だよとかなんだとか言っていたあいつのことを、もっと気に留めてやるべきだったのに、そういう奴だとわかっていたのに。あいつが騎馬戦で落馬した時もそうだった。いや、その辺りのことを後悔しだすとキリがない。そんなことがあったせいで瀬見に「若利は最近大葉に過保護すぎるだろ」なんて笑われたが、仕方がない。それに過保護とはなんだ。大葉が危なっかしいせいだ。

漠然とそんなことを考えながら、俺の大事な人の像が頭の中で埋められていく。
そういえば、最近大葉に付きまとっている腹立たしい奴がいたな。名前は覚えてないが、確かとにかく腹立たしい奴だった。大葉を隣に置いておけないくらい五月蝿くて喧しくて騒々しくて見ていてとにかく腹が立つ。なんでお前があいつの隣にちゃっかりいるんだ?何もないだろうどこかへ行け。怒るぞ。
アレが奏我のようになったらどうする?
なんて俺が訊けば、彼女はきっと穏やかな笑顔を俺に向けながら、その可能性を切り捨てる。
お前が誰かのせいで傷ついたらどうしよう。俺はお前を傷つけた相手に左拳の一発や二発お見舞いしたくなってしまうかもしれない。だから、俺は自分自身を責め続ける。あいつを傷つけたことがあるから。唇を噛んで何かを堪えるようにこちらをまっすぐ見つめるあの表情を、忘れられない。見ていてこっちだって整理がつかなかった。どうして奏我が、おまえの近くにいるだけで、こうも腹が立つんだろう?おまえと一番仲が良い俺が、忠告したのに。あいつとは関わるべきじゃないと。俺の言葉はお前に意味を成さないのか。俺はお前からもらう言葉一つであんなに影響されるのに。

.→←.



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
54人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

あゆむ(プロフ) - ちこうさん» 読んでいただき、こちらこそありがとうございました!返信が遅くなってしまってすみません!;; (2020年8月8日 1時) (レス) id: 67cd23fa6a (このIDを非表示/違反報告)
ちこう - ありがとう御座います!!!!!!!!!!!!! (2018年8月1日 13時) (レス) id: de82aeba6d (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:あゆむ | 作成日時:2018年5月3日 0時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。