カタコトリコ2 (ページ19)

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黒幕のような_ナムジュン視点ページ19

午前7:00。

5月中旬の土曜日のなんてことない朝。

俺はある人に電話をかけた。

いやある人なんて言うまでもない。

俺の大切な友達であり弟であり、従兄弟であり。

テヒョン『もしもし？』

変わらず低くて心に深く響くような声。

ナムジュン「もしもし。テヒョン、元気にしてるか。」

テヒョン『うん、ナムジュニヒョンはどう？』

ナムジュン「俺は何事もなく。」

テヒョン『そっか…で、今日はどうしたの？こんな朝早く。俺、店の開店準備しなくちゃ…。』

テヒョンは眠たそうに欠伸をしながら言った。

ナムジュン「…どうして皆の連絡に返信しないんだよ。どうしてジニヒョンと俺以外には秘密にしてる？いや…どうして俺以外に、記憶が戻ってることを秘密にしてる？」

そう。

俺は知っていた。

ずっと知っていたんだ。

テヒョンが中一になる頃俺はアメリカから戻ってきた。

するとテヒョンが急に話があると持ち出し、全てを話してくれた。

だからAにテヒョンの過去の話をしたのも、テヒョンの為に思い出して欲しかったから。

テヒョン「…前も言ったでしょ。ナムジュニヒョンしか頼れないんだ…ジニヒョンには迷惑かけたくないし。」

テヒョンがボソボソと答える。

ナムジュン「俺には迷惑かけてもいいのか？」

テヒョン「それは違うけど…」

ナムジュン「はぁ…冗談だよ。おじさん(テヒョン父)が忙しいのは知ってるし、ジニヒョンにはこれ以上迷惑かけたくないのも知ってる。そうなれば頼れる身内は俺だけになるよな。そんなの分かってる。」

テヒョン「ナムジュニヒョン…怒ってる？」

怒ってる？

怒ってるのか俺は。

いや違うんだ。

怒ってるんじゃなくて、もう限界なんだ。

ナムジュン「テヒョン。どうして記憶が戻ったことをAに言わないんだよ…」

テヒョンが少し沈黙した。

テヒョン「Aは…ジミンと幸せになって欲しい。」

ナムジュン「それでいいのか？」

テヒョン「いいんだよ…俺はもう。大体、ここのカフェで住み込みでカメラマン修行とバイトするって言うのはずっと前から決めてたことだし。高校もつまんないし！だからいいんだよ…これで。」

良くない。

そう言いたいところだけど、テヒョンの諦めたような哀れな声を聞くとこれ以上俺がなにか口出しして傷つたくないと思ってしまう。

ナムジュン「お前の人生だ。好きにやれ。」

テヒョン「…うん、ありがとう。」