月島蛍、4歳の妹を連れて【夏合宿】

ぐあい ページ47

side 谷地


部屋の隅で課題を進めていると、視界の端にモゾモゾと動き出したのを感じて。



「おはよう、起きた？」



小さな小さなお姫様に話しかけると、少しキョロキョロした後首を傾げた。



「暑かったんだね、それでAちゃん具合悪くなっちゃったんだよ」


『ぐあい…わるくなった…………。』


「そう、覚えてない？」



そう聞くと、目の前のAちゃんは少し俯いて、それから小さな声で『うん…。』と。


とにかく意識が戻ってよかった。

汗ばむ額をタオルで拭ってあげたあと、武田先生から渡されていたスポーツ飲料を飲ませる。



ちびちびと、決して無理はせずに一生懸命飲んでいて。


その頭を優しく撫でてあげると、手をそっと伸ばされた。



「ん？どうしたの？」


『…………だっこしてほしい……。』



なるほど。

具合が悪くなったら人肌が恋しくなる、よく聞く話だ。



その体を抱き留めると、4歳にしてはいささか軽すぎる気がして、ちょっと心配になった。


軽くおでこに手を添えても、特に異常な熱は感じられず。


養護教諭の先生のおかげか、大分倒れた時より呼吸にも余裕があるみたいで、とにかく安堵。


月島君が酷く顔を真っ青にしていたのを思い出して、いてもたってもいられなくて。



「私、お兄ちゃんの事呼んでくるね！」



飛び出そうとしたその袖を、Aちゃんがぎゅっと掴む。



『いか…ないで…………。』



眉毛をへの字にして、心底申し訳なさそうに袖を掴むその姿。

誰がこのAちゃんを見て置いていけるだろうか。



「一緒に、行く？」


『…いく。』



再度私はAちゃんを抱き上げて。


そう遠くない体育館までを小走りで目指した。



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及川訪ねて三千里【及川徹】

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