及川訪ねて三千里【及川徹】

Epilogue ページ30

いつの間にかレストランにいるお客さん達が立ち上がって私たちのプロポーズを祝福してくれていて。


少し照れ臭かったけど、徹先輩となら悪くないかな、
と思う自分もいた。




涙ながらに笑って〈不束者ですが、よろしくお願いします〉と頭を下げると、徹先輩は私の手を取る。


左手の薬指に、また一つの指輪が増えた。




右薬指には、最初に貰ったペアリング。


左薬指には、婚約指輪と今貰った指輪。




どれもそれぞれの輝きに劣らないくらい、綺麗で美しい指輪で。


自分がこんなの貰っていいのかな、と少し自虐気味になってしまうのも許して欲しい。




徹先輩はずっと目の前でニコニコしていて、私はもう涙が止まらなくて。



ただ愛してると、それだけだった。






日本から約三千里。



頼みの綱が一本しかない状態で、自分の思いだけで辿って言った徹先輩。




中学の頃彼と出会って、多分私の人生は大きく変わっていたんだと思う。




6年間の片思い、それから4年のインターバル、後に2年の交際期間。




この恋が報われたのかはちょっと……皆さんに判断を委ねようと思うけど。



幸せであることには違いないと断言出来る。





〈ずっとずっと、幸せにしてね〉




二人の男女が接吻をする影が、そっと浜辺に落ちて。




私の長い長い、複雑な恋路はやっと一本の道になる。






一つの勘違いから始まったこの結婚。








_____アルゼンチンの海は、祝福される私を歓迎してくれた。

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