3月1日 ページ20
「先輩、知らなかったでしょ?私中学の頃から先輩の事好きだったんですよ。勿論恋愛的にね」
からかうように伝えると、及川先輩は瞬きしながら酷く驚いている様子だった。
「だからこのペアリング、貰った時心をへし折られるかと思いました。」
ありのままを伝えると、及川先輩は「え、それほんとに?」と。
ええほんとです、と笑ってやると、及川先輩は頭を抱えた。
「俺があの時素直に渡してればってこと……?」
「はい、勿論!」
「うわぁ、やらかした……」
海の音が聞こえる中、話は弾む。
及川先輩のどこが好きだったとか、及川先輩に彼女がいなくてびっくりしたとか。
気づけば夕方、アルゼンチンの日は長いといえど、落ちるものは落ちる。
及川先輩の「もうそろそろ帰ろうか」と立ち上がったのを見て、少々惜しく、ええ〜と反抗する。
先輩は少し顎をかいたあと「この辺、夜はあんまり治安良くないんだよ」と苦笑いで私を立たせた。
「ん〜!!アルゼンチン楽しかった!及川先輩、急に本当にありがとうございました」
ホテルの前まで送って貰って、チェックインまでしてもらっていたせりつくせり。
お礼にと頭を下げると「いいってことよ」と言う声と共に、「あのさ、」となんだか歯切れの悪い声がした。
「明日俺、丸々offなんだよね」
「へぇ、どっか出かけるんですか?」
「いーや。明日、空いてるよね?」
お誘いに、「遊びに行きたいんですか?」とからかうように言うと「デートに行きたいんです」とニヤリとした笑みが向けられる。
「ふふ、いいですよ。ちゃんとデートプラン考えてくださいね」
「勿論ですよ、お姫様」
じゃあ後でメールするね、と軽快に去っていった及川先輩の後ろ姿はかっこよくて。
見とれていると、急に及川先輩が振り向く。
ズカズカとこちらに向かってきて、私に一言。
「ちゃんとペアリング、付けてきてよ」
言われなくとも。
だってもう、私の右薬指にはそのペアリングが輝いてるんですよ。知ってました?
あ、ちなみに。
ペアリング、ジャストフィットでしたよ、及川先輩。
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3月1日
及川先輩に会えた。積もる話があった。恋路が叶った……のかな?わかんないや。明日はデート。もっとオシャレな服持ってくればよかった。先輩なんで私の指のサイズ知ってたのかが凄く疑問。
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ワッフル☆ - 今までにないような及川さんの小説で見ていてとても温かい気持ちになりました! (12月11日 20時) (レス) @page34 id: 8ecee0a599 (このIDを非表示/違反報告)
美園(プロフ) - うぁ…好きです…好みすぎるお話でした… (2022年7月8日 18時) (レス) @page33 id: 04f1c58536 (このIDを非表示/違反報告)
しし - 素敵…色んな所をたらいまわしにされるRPGのようでとても楽しいお話でした…完結おめでとうございます。 (2020年10月16日 10時) (レス) id: 0787e6d0b1 (このIDを非表示/違反報告)
絢(プロフ) - 心温まるなんて光栄です(歓喜)私の中の及川さんの恋愛的なイメージがヘタレっぽいので、そのように動かして頂きました(笑) (2020年8月24日 21時) (レス) id: 2021c6a537 (このIDを非表示/違反報告)
あんこ - みんなの性格をすごくよくわかってらっしゃって、とても素晴らしいおはなしでした、、、!!!及川さんの少しヘタレな部分もあったりして思わず「クスッ」と笑ってしまう心温まる小説でした!完結おめでとうございます! (2020年8月24日 17時) (レス) id: fbb3dcafb2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:絢 | 作成日時:2020年8月11日 16時