・ ページ15
,
ゆっくりとまぶたを開けると、明かりが瞳に急に入り込んできて、その眩しさに目を凝らす。
右手が握られている感覚がして、少し動かすとすぐに京治の声がした。
「やっと起きた」
京治の手を借りて体を起こすとそこはまだ分娩室。
赤ちゃんはいつの間にかいなくなってて、時計を見れば１時間弱が経っていた。
それとともにずっしりと疲れがのしかかってきて、隣で椅子に腰かける京治にもたれ掛かる。
「……死ぬかと思った」
そのつぶやきは本当にポロッと零れた本音で、それに京治は「死んじゃうかと思った」とつけ足した。
「産んだ後死ぬみたいに寝たから焦ったよ」
「……私寝たのか」
体力も限界だと言え、産んですぐ寝るのは倫理的にいかがなのかと苦笑が漏れる。
理想は「やっと逢えたね、私がお母さんだよ」とかいう暖かな誕生のはずだったのに、そういえばそんなことを言うまもなく寝たな。
なんなら最初に思ったのが「やっと寝れる」だったし。
なんと温かみのない出産だろう。母親が聞いて呆れる。
「そろそろ病室に行こっか」
京治曰く、先生から1時間後くらいに病室に戻るように言われるらしい。
京治の声がかかってからすぐに看護師さんがやってきて、「あぁ、目覚めましたか」と微笑んでくれた。
「っあぁ、性別は？」
はっと頭に赤ちゃんの性別のことを思い出し、聞きそびれたと聞き尋ねる。
京治と話し合った結果、産まれるまでどっちか知るのは我慢しようと決めたから、あれだけ楽しみにしてたのに。
京治はふふふと微笑んだ後、「どっちだと思う？」と。
「勿体ぶらないでよ」
「はいはい、女の子。可愛い女の子だったよ」
それを聞いて私も笑みがこぼれる。
どっと疲れているはずなのに、赤ちゃんを一目見たくなって、新生児室へ行きたいんですけどと看護師の人に言うと笑われた。
「お母さんまだ疲れてますからね、休憩を撮ってからまたご対面しましょう」
「そうだよ、Aクタクタなはずなんだから」
後ろ髪を引かれる思いで二人に背を押されて病室へ。
ベットに横たわり、京治にトントンと一定のリズムで体をあやされれば、疲れた体はすぐに睡眠の体制を取る。
「……二人で、赤ちゃん見ようね。私が起きたら」
「約束。だからしっかり今は寝て」
布団は暖かくて、この暖かみは京治のおかげかもなと微笑みながら、目を再び閉じた。
,
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 242人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ハイキュー」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
絢 - 蒼さん» いつもありがとうございます。一話目の件なのですが、確認したところ蒼さんの言う通り非公開になっていました…。こちらの不手際です…すみません。 (2021年6月15日 8時) (
レス) id: 0871b431d8 (このIDを非表示/違反報告)
蒼(プロフ) - このお話面白くて大好きです…！！その、質問なのですが1話目の始まりってこれであっているのでしょうか、、�気�未公開になっているような気がして…間違ってたらごめんなさい。 (2021年6月14日 17時) (レス) id: 28b65fe11b (このIDを非表示/違反報告)
絢(プロフ) - ことりさん» いつも応援ありがとうございます。私も2匹の大怪獣を育てていますので、日々奮闘する毎日です(笑)そんな子育てのちょっと笑えたり、どうしても辛かったり、そんなリアルをお届けしたいと考えています。お互い世知辛い世の中ですが、頑張りましょう…！ (2021年2月18日 7時) (レス) id: 2021c6a537 (このIDを非表示/違反報告)
ことり(プロフ) - こういうの待ってました…！！私も子育てに奮闘しながら合間に夢小説に癒されている毎日なので…笑 お相手が推しで子育て物だなんて多分読んでる途中に泣く気がします。笑 ツッキーの妹からずっと応援しています！これからも楽しみにしています。 (2021年2月17日 8時) (レス) id: 676d79dd2d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：絢 | 作成日時：2021年2月17日 7時
