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そこは暗闇だった

暗闇の中央には、鬼が立っている
ひどく美しい少年

《天邪鬼》だ

鬼が言う

《……おまえ、本物のバケモノになっちまったんだな》

その鬼の表情は、少し悲しそうだ

それがどういった意味なのか、私にはわからない
わからないが、それはもう、どうでも良かった

吸血鬼になってから、何か大事なものが欠落してしまっていた

吸血鬼になる前から、人間として大事なものはほとんど欠落していたけれど
ほんの僅かに残っていた人間らしいところも、全て無くなってしまった

あるのは虚無感
それと、酷い渇きだけ

この渇きは、血への渇きだろう

一瞬、血のことを考えると、全身が震え出しそうなほどの強い渇きを感じた

もしも血を口にしたら、大きな快楽が得られるだろう
本能的にそれがわかる

私は顔を上げ、鬼を見る

私の心情を読み取ったのか、鬼は顔を顰める

《血に対してしか興味がないんだな》

「そうみたいだね。鬼の血でも飲めるかな?」

《鬼は吸血鬼にとって毒だからな。死ぬんじゃねぇか?試してみてもいいぞ》

そう言って鬼は、真っ白な肩を見せてくる
それを見た瞬間、血への欲求が膨れ上がる

私はそれに対して、自嘲的に笑う

「やめとくよ。君の血は不味そうだ」

《ははは、賢明な判断だな》

そろそろ起きよう
これ以上鬼と話していても、意味がない

また、鬼になってしなう

あれになるのは二度とごめんだ

《もうおまえは、十分バケモノだけどな》

私はそれに、微笑む

もう何も悟られないよう、心に防御壁を作る
すると鬼は、不服そうな表情を浮かべる

《ちっ、また壁を作りやがって……》

こうする以外、耐える方法がないからね

血の欲求に対して、私は滅法弱くなってしまった
吸血鬼になったのだから、当たり前なのだけど

今度こそ、目を覚まそうとする

しばらくして、私はまた、意識を失った

吸血鬼のセカイ→←02



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ルカ - 吸血鬼側の夢主大好きです。これからも更新頑張ってください! (2017年10月29日 12時) (レス) id: fafbd1fba3 (このIDを非表示/違反報告)
もちもち(プロフ) - 山田花子モドキさん» ありがとうございます!そう言ってくださると嬉しいです。更新頑張ります!! (2017年8月25日 23時) (レス) id: 0767b2f3df (このIDを非表示/違反報告)
山田花子モドキ - 更新頑張ってください!!こういう作品あまりないので、とっても面白いです!! (2017年8月25日 18時) (レス) id: 11c8cc3cad (このIDを非表示/違反報告)
もちもち(プロフ) - こけしさん» こちらこそ、ありがとうございます。 (2017年7月28日 23時) (レス) id: 0767b2f3df (このIDを非表示/違反報告)
こけし(プロフ) - ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ星を百個あげたいっ!!ありがとうございますうううううう← (2017年7月26日 0時) (レス) id: 7f4d6f5010 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:もちもち | 作成日時:2017年1月14日 20時

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