日常 ページ6
『ね、ハグしていーい？』
「って言いながらお前さ、もうしてんじゃん」
ある日の楽屋。
いつも通りボケ倒す末ズに、茶々を入れながら盛り上がっている他3人。その横で一歩引いたような様子でいた優吾に後ろから抱きつくと、呆れたように肩を揺らして笑われた。
『寒いんだ、あっためてよ』
いいでしょ、ゆーご？
後ろから顔を覗きこむように言えば、優吾は息を詰めて目を逸らす。
俺からの名前呼びに弱くてすぐ耳赤くなるの、かわいーよね。
「っ、わかってやってんだろ」
『何がー？』
「…寒いならあったかい飲み物でも買ってこいよ」
あ、拗ねちゃった笑。
それに、まぁ俺が寒いのも嘘じゃないんだけど…
『優吾も寒いでしょ？いつもより薄着じゃん、寒がりのクセに』
そう言って、ポケットからさっき来る前に買った缶コーヒーを出して握らせる。
まだほんのりあったかいそれは、冷たかった優吾の手に熱を戻してくれるだろう。
『プレゼント』
「え、」
『無理すんなよ、“おねーちゃん”』
抱きついていた腕を解き、優吾の頭を軽く撫でる。
そのまま優吾から離れて、今度は他5人の方の輪に入りに行こうとしたら、さっきまで騒がしかった5人はいつの間にか静かになっていた。
「うわぁ〜」
「これが綾城Aの本気か…」
「あんなんサラッとやんなよ、惚れるだろ」
「俺にはないの？」
「綾ぁ、こーちのこと口説くなよ〜！」
俺の本気はもっとすごいよ、北斗？
樹、惚れるのは大歓迎。
口説いてねーよ笑。俺はゆごジェ推しだから安心しろ、ジェス。
おっと、かわいい妹からのおねだりには応えないとね？
『大我、口開けて？』
「ん、…！」
『喉痛めないよーに』
「はちみつレモン！」
『嫌いじゃないでしょ？』
「うん。サンキュ」
『いーえ』
大我にのど飴をあげれば、俺も俺もとねだってくる末ズ。
ポケットからのど飴を五、六個。ついでに普通の飴も二、三個出すと、北斗が目をパチクリさせた。
「あなたのポケットって、ホント四次元よね」
「そのうち車欲しいって言っても出てきそう」
慎太郎がケラケラ笑う。
へーえ、たろ、車欲しいの？
『キーならあるから、帰り送ってこうか？』
慎太郎の肩に手を回してその身体を引き寄せ、チャラ、と人差し指で自分の車のキーを回す。
「え、マジ！？送ってくれんの？」
『んふ、車はあげれないけど、それくらいならいつでも』
わーい、と素直に喜ぶ末っ子。俺の弟まじかわいい。
他の奴らじゃ、こんな素直に喜んでくれないしね。
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作者名：あげは | 作成日時：2023年12月2日 0時
