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「会社の番号どれ？あ、これ？」
「やめてくださいっ、「それ以上喋ったら殺す」
テヒョンさんは私の首を緩く締めてくる。
彼の目の奥は冷たかった。
「あ、もしもし？イ・Aなんですが――」
どうしよう。
私、これからどうなるんだろう。
とりあえずテヒョンさんが帰った瞬間に警察に通報しなきゃ――。
そう思ったとき、
「連絡しといた！今日からは俺がなんでも買ったげるから心配しないで！」
と、満面の笑みで、
「見て！お星様きれいだね〜。夜風も最高」
と、窓を開けて
私の携帯を
「えいっ」
窓の外へ放り投げた。
携帯は完全に終わりだ。
いよいよどうしよう。
テヒョンさんが帰ったら直接警察に行こう。
「なにさ、難しい顔して。Aは何も心配することないんだよ？」
心配することしかない。
「あ、そーだそーだ。いいもの持ってきたんだよね」
テヒョンさんが唐突にカバンを漁りだした。
「これこれ。はい、飲んで」
いや、怪しすぎでしょ。
テヒョンさんが私に差し出したのは、種類の違う2錠の薬だった。
「何の、薬ですか」
「ん？A風邪気味でしょ？風邪薬」
たしかに若干喉は痛いけど。
テヒョンさんだし、風邪薬な訳がない。
無理、怖すぎる。無理。
「いえ、薬を飲むほどでは」
「ん？飲んでくれないの？」
「はは」
「笑ってんじゃねえよ」
人間社会、力では何も解決しない。
ただし
とりあえず力で人を服従させることは可能だ。
彼はついさっきまでニコニコしていたのに、一瞬で人を殺すような目をするし、実際殺そうとするので本当に頭がおかしいし、本当に怖い。
私の左腕を思い切り噛んでから、テヒョンさんは言う。
「風邪薬飲んで終わるか、吐くまで俺の指喉の奥に突っ込まれるか、どっちがいい？」
「……風邪薬で、」
「うん、偉いね」
ごめんね、かわいい、と今自分が噛んだ左手を優しく舐めて、口移しで薬を飲まされた。私がこくんと薬を飲んだときには、彼の目から冷たさは消え、とろけるような深いキスをされた。
結果としてそれは、風邪に効く薬ではなかった。
薬を飲んだと思ったら、次の日の朝になっていたのだ。
つまり、記憶が消えたか、薬を飲んですぐ寝てしまったということなのである。
さらに、起き上がろうとしても体が言うことを聞かないのだ。
こわ。
携帯もないし、いっそ死にたくなってきた。
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作者名：kiina | 作成日時：2019年1月20日 18時
