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新しい家は、きれいな見た目のマンション。
それなりの広さがあるのに安いのは、インターホンに顔が表示されなかったり、オートロックじゃなかったり、若干防犯の設備がゆるいのが大きいんだろうけれど。
とにかく、やっと解放された。
重たい空気、気まずい関係、自分が7人をバラバラにしたという自責の念。
もちろん今もまだ鮮明に頭に残っているし、一生、綺麗に忘れ去ることはないのだろう。
けれどそれがこれから少しずつ記憶から薄れていく……少なくともこれ以上嫌な記憶が上書きされていくことはないのだと思うだけで、ほんの少しだけ、心が軽くなった。
それなのに。
外が真っ暗になり、新しい家での荷物整理も大まかに終わったところで、メールチェックでもしようとスマートフォンを開くと、不穏なメッセージが届いていた。
『新しい家に着いたんだ？
宿舎から意外に近いんだね。
街並みも綺麗だしいいところじゃん』
なんで？
どうして場所がわかったの？
見られてる？GPS？
嫌な汗が出て、体の内側が冷えていく感覚がした。
どうして。どうしてどうしてどうして。
メッセージをブロックしてやろうか。
だめだ、何の解決にもならない。
ピンポン、
インターホンが鳴る。
本棚が届くの今日だっけ？
そう思いながらドアを開けると――。
「っ、！」
「会いに来たよ！」
思い切り玄関に押し返される。
青ざめる少女と、
子どものように無邪気に笑う、メールの送り主。
「GPSバレなくてよかった！どう？サプライズ。
A、俺に会いたかったでしょ？」
意味がわからない。
怖い。
「答えろよ、会いたかっただろ？」
声が冷たくなる。
テヒョンさん。貴方はもう完全に狂っている。
手遅れだ。
頭が混乱するなかで、とりあえず警察に通報しようとスマホを手を伸ばす。
「だーめ。連絡禁止」
が、あっけなく没収されてしまった。
「俺、いいこと考えたんだよね。
A、働かなくていいよ。
俺が代わりに、A辞めますって会社に連絡しておくから。
俺がAのこと養ってあげる！」
は、
何を言ってるんだこの狂人は。
「な、何言って、」
「んー？そんな嬉しい？俺も嬉しい！」
「意味が、わかりません……」
「本当はBTS辞めたい位だけど、それは我慢するー」
終わってる。
私が居なければ、彼はアイドルとして、人として真っ当に生きていたのか。
それとも。
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作者名：kiina | 作成日時：2019年1月20日 18時
