387 ページ37
．
雑談交じりに歩いていると、首に巻き付けた捕縛布の中＿＿＿正確には、その中に突っ込んでいた携帯端末から着信音が鳴り始めた。
「ん……？ 俺か」
「出てみろよ、緊急連絡かも。誰から電話？」
「香山先輩からだ。何だろうな……」
呟きながら通話ボタンを押し、端末を耳に当てた消太は、こちらが口を挟む暇もないほどに切羽詰まった声を聞いた。
【相澤くん！ 付近の市民を今すぐ全員避難させて！ 凶悪なヴィランがもうすぐ市内に侵入するわ！】
前科十五犯の大型ヴィラン・ガーヴィー。
その能力と、奴が現在バスターユニオンの集中砲火と同等かそれ以上のエネルギーをストックしていること。
隣町からこちらの方角に向かって進行中であること。
さらには、生体反応を見つけるとエネルギー弾を放ってくる可能性が高い事など、だいたいの情報を息継ぎする間もなく告げられた。
隣で話を聞いていた朧の顔が、消太と同時に青ざめていく。
「まずいぞ、さっきの園児たち……！」
「ああ、ちょうど隣町の方に向かっていったはずだ！急げ！」
未就学児の短く遅い脚では、避難も大幅に遅れてしまうだろう。
しかし、ここには朧が居る。
こういう時にこそ個性クラウドはその有用性を発揮するのだ。
合図は要らない。
消太が朧の雲の上に飛び乗ると、二人揃って元来た道を一目散に引き返した。
「あー！ ラウドがまた来たー！」
「イレイザーもいるよー！」
走ってもいないのに心拍数が上昇し、額から汗が滴り始めたころ、二人はようやく先程の園児たちに追いついた。
「ヴィランがこちらに向かっています！ 子供たちを早く雲に！！」
引率の保育士に早口で説明を済ますと、二人で次々と子供たちを抱き上げていく。
周囲を慌ただしく人々が駆け抜けていき、そんな緊迫した雰囲気に追い打ちをかけるようにポツポツと弱く上空から降り出した雨。
しかし、「こんな時こそ笑顔で」をモットーに掲げる男は強い。
「よーし皆！ 元気に非難だ！ 押さない・駆けない・喋らない！ ちゃーんと守ってついて来いよー！」
先程までは消太同様に不安げな顔をしていたくせに、子供たちを視界に映すなり明るい笑顔に戻った朧を、やっぱりすごい奴だと思う。
ヒーローとは混乱の渦中にある市民に希望を与える存在でなければならない。
救われるべき人々に自分の不安を押し付けてはならない。
消太の親友は、ハイネス・パープルが以前言っていた言葉通りのヒーローだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1414人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
メケメケ(プロフ) - まめさん» まめさんお待たせしました〜！また読みにきてくれてありがとうございます！！😭 (5月5日 15時) (
レス) id: 9f81822037 (このIDを非表示/違反報告)
まめ - 更新待ってましたーーー！！！まじ一生愛ついてきます。 (5月5日 9時) (レス) @page39 id: faa4b97585 (このIDを非表示/違反報告)
メケメケ(プロフ) - STELLAさん» ひーーん嬉しいです！😭更新頑張ります〜！！ (5月4日 21時) (レス) id: 9f81822037 (このIDを非表示/違反報告)
STELLA(プロフ) - 更新待ってました!これからも頑張ってください!毎日楽しみにしています! (5月2日 19時) (レス) @page48 id: b056f6d001 (このIDを非表示/違反報告)
メケメケ(プロフ) - くじらさん» くじらさんありがとうございます！！GW突入しましたので、また更新張り切っていきますね！！！🔥🔥🔥 (4月27日 9時) (レス) id: 9f81822037 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：メケメケ | 作成日時：2024年1月27日 16時
