時よ １０ ページ10
「…はぁ」
本日何度目のため息だろうか。
書類を終わらせようとペンを動かすも、文字化けの部分があって読めやしない。
もちろん聞きに行こうかとも思ったのだ。
しかし私がここで聞きに行けば、あの人が嫌悪感を抱いているので答えてくれるかどうか。
グルッペンに押し付けようと考えて待っているが、一時になっても戻ってこない。
これは確実に抜け出したな。
とりあえず他の書類は終わらせた。
でもどうせ提出で出会うのだから今更だな。
ガタン
席を立って重い段ボールを抱える。
ドアを開けて廊下を渡る。
「…ん、A」
「っえ」
名前で呼ばれた？
緑パーカーの…ゾム、だ。
「貸せ、どうせトントンのところやろ」
ふわっと段ボールが浮く。
「え、でも」
「なんや、文句あるんか」
「…ない」
「ならええやろ」
優しさ、と受け取ってもいいのだろうか。
「…せや、お前あと3人挨拶しとらんやろ」
「そうだけど…場所が分からなくて」
「エーミールが図書館、ひとらんらんが庭園、しんぺい神が医務室や」
「あ、りがとう」
「…ん。お前、意外とええやつやってんな」
「へ？」
「また、手合わせしようや」
そういってゾムは段ボールをご丁寧に書記官室の前に置いて去ってしまった。
いいやつ…どこにそれを感じる要素があったのかわからないが、まあ悪く思われるよりはいいだろう。
コンコンコン
「はい」
「私。書類を届けに来た」
「…入れ」
ガチャ
段ボールをもって部屋の中へ入る。
「そこに置いとけ」
「うん、あと…」
「なんや」
ギロッと睨まれた。
そこまで嫌いか。
「この書類、文字化けしていて読めなかった。新しいのが欲しい」
「…ほんまや。ちょっと待っとれ」
しばらくすると、新しい書類が手渡された。
「ん、ありがとう。あともう一つ…」
「…」
「ちゃんと寝たほうがいい。倒れる」
バタン
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作者名：ステラ・エイヴェル | 作者ホームページ：http://uranai
作成日時：2019年4月7日 22時
