兄達と長女６ ページ46
「お、戻ってきたじゃん」
Aはドミナと服屋の前でたむろしていた兄達と合流した。何もしていなさそうでホッとしつつ、恋人繋ぎの自分達を見られて少し顔を赤くする。
「……へぇ〜ドミナとAラブラブじゃ〜んウケる」
「ん？どこがだ」
「見りゃ分かるっしょ」
「…」
Aはデリザスタに茶化されて更に真っ赤になった顔を伏せるように隠した。ドミナと握っている手が更に強く握りしめられたような気がする。
「なに？嫉妬かな？」
「はぁ？そんなダセえことするわけねーじゃん」
明らかに苛ついているらしいデリザスタだが、それを隠すように笑って言った。嫉妬はダサいと言われたが、そんなことは気にしない。ドミナはわざとAを抱きしめデリザスタを煽った。
「…っああ゛〜〜生意気な弟だなてめぇ゛！！」
「嫉妬はダサいんじゃなかったのか？」
「黙れよ一番弱いくせに！！」
「落ち着けデリザスタ、今は魔法が使えないのだから私達のほうが弱者だろう」
Aはドミナに抱きしめられながら、目の前でドゥウムに押さえられるデリザスタと、その周りで各々自由に過ごすエピデムやファーミンを見て思った。
こんなにも個性で溢れた兄妹達が仲良くなんて、幻想だっただろうか。
普通の兄弟のように仲良くあってほしいというのは、単なる私のエゴだったな。
「…A？」
「ん…？何お兄ちゃん」
暗い顔をするAが気になったのか、ドミナが優しく声をかけた。妹の哀しげな雰囲気に気づき、デリザスタも暴れるのをやめた。
「…みんな、今日楽しかった？」
悲しそうに、悔しそうに、そして申し訳なさそうにそう問う妹に、兄達は首を傾げた。
「楽しかったに決まってんじゃーん
シャバに出れるだけでありがてぇわ」
「ああ、私も本場のパンケーキを食べられて楽しかったぞ」
「不自由だけど、悪くなかったな」
「新鮮なプリンが食べられて歓喜の極みでした、PURIN！」
「Aと一緒ってだけで僕は楽しいよ」
嘘ではないだろう。
彼らは気遣いをするような人達ではないことを、妹であるAは十分理解していた。
「…そっか」
初めて気遣いのできない兄で良かったと、Aは笑顔になりながら思った。
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作者名：そらいろ | 作成日時：2024年3月13日 19時
