兄達と長女5 ページ45
「おっ、お兄ちゃん!ちょっと!」
Aは慌てていた。他の兄達を置いていってしまっていることもそうだが、何よりドミナが怒っていることを察したからである。
ドミナは人気の無い路地に入ったようであった。先程まで明るかった視界が急に暗くなり、Aに焦りが募る。
正直魔法でどうこうなるのだが、それはドミナの思いを踏み躙るような気がしてならず、Aは大人しくドミナに手を引かれるしかなかった。
「A」
「っ…、なに…お兄ちゃん?」
かなり速く走ったためAは息切れしていた。
顔を伏せているせいか表情が見えず、探り探りのことしか訊けない。
「Aは…Aは僕のこと、愛してるよね?」
「…?うん、…愛してる、よ?」
少し恥ずかしくてたどたどしい言い方になってしまったが、Aはしっかりドミナを愛している。可愛くて優しい兄として。
「ファーミンは?」
「ファーミン?ええ…、いや別に好きでもなんでも」
「じゃあなんでファーミンを構うの」
「ちゃんと私が見とかないとだめなことになってるから…」
「………そう」
なんとなく、嫉妬したんだなと思った。兄は重度のシスコンであることを、Aは知っていた。
申し訳ないことをしてしまったと思って、Aはゆっくりドミナを抱きしめた。
「ごめんねお兄ちゃん、嫌な思いをさせてしまって…」
「…」
ドミナは少し無言になってからAを抱きしめ返し、Aの顎に手を添えてキスを落とした。
急な口づけに真っ赤になったAを見て、思わず目を細める。
「…キスは僕にしか許してないよね」
「ぇ…あ、うん、うん……」
「そっか」
Aの返答を聞いて、先程までのドミナの不穏なオーラは消えていた。その代わりなのか、タガが外れたように何度もキスを落とし始めた。
「ちょ、ちょっと…お兄ちゃ、んっ」
Aの制止の声を気にも留めず、ドミナは満足するまでキスし続けた。
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作者名:そらいろ | 作成日時:2024年3月13日 19時