ローズクォーツ兄弟と長女５ ページ31
「…ごめんレヴィ、嫌なことを思い出させたな」
ロヴィは自身の言葉に対するレヴィの反応を見て謝った。わざわざ言うことではなかったと、深く反省する。
それからしばらく沈黙が訪れ、気まずい雰囲気が二人の周りを包む。
その沈黙を破ったのはロヴィであった。
「…さっきまでAちゃんが来てたんだ、声が聞こえてただろ？少し本の話で盛り上がってな
レヴィが来たことに気づいたのも、Aちゃんが教えてくれたからなんだ」
ロヴィはレヴィの顔色を伺いながら、そう話した。なるほど、兄並みに打算がないらしいAなら気を遣ってこの場を離れるだろう。久しぶりに会う兄弟の邪魔などしたくはないはずだ。
レヴィは兄の説明に納得し、とりあえず椅子に座った。そのままぐるぐると思考を巡らせ、何を喋ればよいか考える。
しかし、一流の指導者によって育てられた頭脳をもってしても、レヴィはこのとき何を喋ることがベストなのか、分からなかった。
「…レヴィ」
「…！」
どうしようか焦っていると、不意にロヴィがレヴィの肩に手をやった。ロヴィが元気なときでさえほとんど触れることは無かったが、その手の温もりにレヴィは酷く安心し、徐々に落ち着きを取り戻した。
「大丈夫、レヴィが言いたいことを言ってくれ。オレのことは気にするな」
「…っ」
ああ、やはり兄は強い。強くて優しい、何よりも誇れる存在だ。
昔は忌々しかったはずなのに、いないほうがいいとさえ思っていたというのに。
なんで、なんでこんなにもオレに優しくしてくれるのだろう。
「！」
いつの間にか、レヴィの頬には涙が伝っていた。泣くのなんて久しぶり過ぎて、全く気づかなかった。
レヴィは急いで涙を拭こうと袖で目元を擦ろうとした。しかし、その行動は兄によって制止されてしまう。
「レヴィ」
兄はそう呼びかけて、そっと自身の胸にレヴィを抱き寄せた。溢れた涙が、どんどんロヴィの服を濡らす。そのままロヴィはレヴィの頭に手を乗せ、優しく撫で始めた。
「頑張ったな、レヴィ」
それはまるで、昔ロヴィが自分にしてくれた抱きしめ方のようであった。
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作者名：そらいろ | 作成日時：2024年3月13日 19時
