無邪気な深淵と長女8 ページ20
「うおーよしよし、お兄様がいるからな」
急に泣き始めたAに驚きつつも、デリザスタは兄としてあやしてやる。ぼろぼろと涙を流すAが異様に幼く見え、不思議な気持ちになった。
目の前でここまで大泣きしたことなど今まで一度もなかったはずだ。
「ふぁーみんきらい゛〜〜〜!!」
「フッ…、オレっちも嫌いだわあいつぅ」
直球でそう言い放つAが面白くて、少し笑みが溢れた。ここまで感情を爆発させることは珍しいなと、自分の知らないAを見れて嬉しく思いつつ、同意してやる。
「あしなくな゛ったぁ゛〜〜〜!!」
「これからはオレっちが運んでやるから」
「えぇ゛〜〜ん゛…!」
「よしよし、良い子だから泣き止め?な?」
「うぅ゛…ひっぅ…うん…」
背中を優しく撫でながら泣き止むことを促すと、Aはしゃくりながらもどうにかして泣き止もうと黙り込んだ。
素直なAを可愛く思いながら、目元を擦ろうとする手を止めて、そっと涙を拭う。
「とりまパーリーで忘れよーぜ?」
気分が沈んでいる時はパーリーをするに限る。
刹那的享楽主義者である彼でもストレスが溜まる時はもちろんあるのだ。よって、こういうときこそパーリーである。
「うん…ひっく…」
「よ〜しじゃあオレっちの部屋行くかぁ」
Aが自分に同意すると、デリザスタはすぐに彼女を抱き上げた。右足が無いからかいつもより抱き上げづらい。
「きょおいっしょにねてもいい…?」
まだ貧血気味なのか、それとも泣き疲れたのか、Aは弱々しい声をあげた。
全く力のこもっていない手で服に皺をつくるAの弱さを実感して、少しだけ、ほんの少しだけ加虐心が生まれ、いじわるをしてみる。
「え〜…、やだ」
「やだぁいっしょにねるぅ…!」
やっと泣き止んだAの瞳にまた涙が浮かぶと、デリザスタは笑いながら訂正した。不服そうに頬を膨らませる様子が面白い。
「…おにいさまきらい」
「はぁ!?なんでだよ!!」
ちょっとした仕返しに慌てるデリザスタを見て、Aは悪戯っ子のように笑うのだった。
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作者名:そらいろ | 作成日時:2024年3月13日 19時