無邪気な深淵と長女６ ページ18
「とりあえず血を飲ませりゃいい感じ？」
デリザスタはそう言いながら、掌から血を溢れさせた。
Aも魔心臓を移植して貰えれば、血がどれだけ溢れても死ぬことなど無い、そもそも傷がついてもあっという間に治るというのに…。
何故こいつはお父様を拒絶するのだろうか。何故お父様の為に戦おうとしないのだろうか。
この時初めてデリザスタは不思議に思った。
「この状態で飲めっかなぁ」
疑問に思いつつも、デリザスタはAの口を開けて血を流し込んだ。すぐに口から血がボタボタと溢れ始め、ドゥウムの足元を汚していく。
「これ飲めてなくね？」
「駄目そうか」
「エピデムに訊いてみる？あいつ科学者でしょ？こういうのの対処法知ってんじゃねーの？」
「研究対象として使われるのがオチだろう」
「オレの兄クズしかいないじゃん」
「………」
デリザスタの発言にドゥウムは不服であった。そもそも貴様も大概だろう。
文句を言いたい気持ちを押し殺し、虚脱状態のAを床に下ろして上半身と頭のみ支えた状態にする。
「この状態でもう一度血を飲ませてみよう
先程は喉自体開いていなかっただろうからな」
「ん〜〜〜…」
少しばかり考え込んでから、デリザスタはAの前で屈み顎を掴んだ。
そのままAの顔を凝視し、視線を少し下に持っていくと、何を思ったのか、お互いの唇を合わせた。
「………」
ドゥウムは目が見えないが、他の五感によってデリザスタが何をしているのかは感じ取れる。
なんのつもりだと思っていると、Aの咳が聞こえてきた。
「っん゛…ッ、ぶ……」
無理やり血を飲ませているのだろう。
デリザスタの思惑を察したものの、ドゥウムは接吻している兄妹の近くにいる訳で、私の気持ちも考えろと内心文句を垂れるのだった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 114人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：そらいろ | 作成日時：2024年3月13日 19時
