【MASHLE】無邪気な深淵の６番目長女３ (ページ17)

今日:28 hit、昨日:155 hit、合計:27,091 hit

無邪気な深淵と長女５ページ17

「無様だな、Aよ」

Aの右足の切断面をじっとり見つめながら、イノセント・ゼロは言った。
ここまでドゥウム達がやってくる間もボタボタと血は流れており、Aは既に気を失っていた。

「お父様、このままではAは死んでしまいます。お父様の力でAを治して頂けるでしょうか」

イノセント・ゼロはすぐに返答することはしなかった。
ドゥウムの横に並ぶデリザスタの、何か言うのを堪えているような顔を見て、少し考え込む。

Aを見殺しにしたとして、デリザスタはどうするか。
そもそもAは死んでも、また生き返る可能性もあるが、自身の宝を失くした父に反逆し、敵側につくのか。
つこうとするとして、力で圧するのは面倒だ。

「分かった、しかし足は治さない
Aの身動きがとれぬ方がこちらとしては都合が良い」

そう言うとイノセント・ゼロは、Aの右足付け根部分のみに魔法を使用し、血が流れなくなるまで時を進めさせた。
みるみるうちに流れる血が少なくなり、完全に切断面が塞がる。

「あとは輸血なりなんなりどうにかしなさい
幸いお前たちは皆同じ血液型だ、輸血なぞ簡単だろう？」

イノセント・ゼロはそう言い残すと、その場から一瞬で姿を消した。
残された二人はしばらく無言になり、ドゥウムに抱き上げられたAに顔を向けながらデリザスタが先に口を開いた。

「…輸血ってどうやんの？」

「………分からん」

そう、二人は応急処置の方法すら全く知らない無知な男達である。
輸血の方法など、彼らが知るわけも無かった。