無邪気な深淵と長女 ※全話色々注意 ページ13
誘拐時
静寂の中、一人の人間の足音が鳴り響くマゴル城廊下。
虚ろな目をしながら歩く少女、Aは突然立ち止まり後ろを振り向いた。
「…さっきから何?ファーミン」
………
薄暗い廊下には誰もいないはずであった。しかし彼女はしっかりとある一点を見つめながら名前を呼んで、何者かに訊いたのだ。
「…なんだ、バレてたんだ」
すると突如として、ピエロのような格好をした男が現れた。無表情で剣を持っているその男、ファーミンは何処かつまらなそうである。
「なんで分かった」
「さあ、兄妹の勘?」
「嘘つけ」
「何その剣、物騒」
「お前にいたずらしてやろうと思って」
ファーミンの返答を聞いた瞬間、Aは酷く顔を顰めしばらく無言のまま見つめ合った。心底気持ち悪い、嫌いといったような感情を丸出ししていたが、ファーミンは全く気にしていないようである。
「せっかく本物の剣を試してみようと思ったのに」
剣を見つめながら変わらぬ表情で残念がるファーミンを無視して、Aはまた歩き出した。
足音が聞こえてAが歩き始めたと分かったファーミンも、また歩き出す。
「どこに行くんだ?」
「デリザお兄様のとこ、あそこが一番安全」
トーンを変えぬまま淡々と話すAに気が障ったのか、ファーミンの纏うオーラが一段変わった。その変化を感じだったのか、Aも足取りを止める。
「…なにっ…!?」
ボトン
次の瞬間、Aはバランスを崩し尻もちをついていた。
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作者名:そらいろ | 作成日時:2024年3月13日 19時